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タンゴ・エレクトロニコとの出会い(後編)

タンゴ2012-01-12 01:42

前回の記事の続き。

というわけで、主にアルゼンチン本国を舞台にここ10年ほど続いている、タンゴとエレクトロニック・ダンスミュージックにまつわるムーブメント。以下では、この動きに関係する(と思われる)バンド/アーティストのなかで、特に気になったものをピックアップしてみます。内容は特に網羅的というわけでもなく、あくまで個人的な好みを反映したものです、ってことで念のため。
なお、始めに言及したGotan Projectは、拠点がヨーロッパで、ここで触れるムーブメントとは時間軸も少し異なる(99年に活動開始)ようなので、省略しています。

Bajofondo(バホフォンド)

グスタボ・サンタオラージャという南米の大物プロデューサーが率いるプロジェクトで、当初は「Bajofondo Tango Club(バホフォンド・タンゴ・クラブ)」として活動、同名のデビュー盤はユニバーサルから日本国内盤も出ています。私は渋谷のレコファンで、デビュー盤とサードアルバムの"Mar Dulce"を探して買いました。特に、サード収録でシングルカットもされている"Pa' Bailar"は、バンドネオンに小松亮太さんが参加していて、YouTubeのPVの再生回数が160万回を超えるなど、それなりにヒットしたようです。

私は、ファーストに入っている"Perfume"(パフュームじゃなくて「ペルフーメ」)が好きです。これとか、もうスタイルは完全にディープハウスなんだけど、ひたすら内向する精神性に、ものすごーくタンゴを感じてしまいますね。

で、さらにこのバンドは、よりクラブミュージックに特化した小編成のDJセット「Bajofondo Remixed」でもパフォーマンスを行っていて、それが私の思う理想的なテクノ×タンゴの姿に限りなく近いです。ラップトップにベース、ヴァイオリン、バンドネオンという編成。文句なくかっこいい!この路線は、世界中で他に誰もやっていないはずなので、追求してほしいな。

上のライブの2曲目は、DJのPablo Bonillaが自身のユニットOmar名義でリミックスした"Pa' Bailar"で、これなんかは普通にDJで使えるミニマルトラックですね。ただ、今のところ音源がiTunes Storeくらいでしか買えないので、今後BeatportやJuno Downloadあたりもカバーしてほしいところです。


Tanghetto(タンゲットー)

タンゴとゲットー(ghetto)でタンゲットーというわけですが、名前よりも、次のPVのインパクトがすごい。New Orderの"Blue Monday"のカバーを、バンドネオンでやってます。全然違和感ない。

他にもEurythmicsの"Sweet Dreams (Are Made Of This)"をカバーしていたり、ピアソラのコンフント・エレクトロニコの『トロイロ組曲』から"Zita(シータ)"をやっていたり、原曲重視の手堅い仕事が目立ちます。先に引用したTango Pulseというサイト上のTanghettoのインタビューは、今の流れを現地の演奏家がどう考えているのか、がよく分かる良記事でした。


San Telmo Lounge(サン・テルモ・ラウンジ)

このバンド、すごく気に入りました。どれくらいかというと、アルバム"Electrocardiotango"を買うために、初めてAmazon mp3を利用したくらいです。iTunes Storeでも買えるけれど、DRMフリーのmp3で欲しかった。

良いです。ファン・ホセ・モサリーニとアントニオ・アグリによる(アンプラグドな)キンテートが、90年代に素晴らしく先進的な"Sonagasata"というタンゴ作品を出していますが、不思議とそれを連想しました。
また"Barderita"という曲なんかは、まさしくピアソラ・スタイルのフーガで、冒頭の主題をバンドネオン→ギター→ノコギリ波と繋いでいくところが、異様な興奮を誘います。

一方で、別のアルバムではピアソラの"Zita"や"Biyuya"を、比較的大胆にアレンジしているようですね。特に面白かったのは"Buenos Aires Hora Cero"で、深夜0時のブエノスアイレスの情景を描いた原曲に、現代都市らしいノイズやサンプリングを重ねて、「今の深夜0時」にアップデートしているところです。

オラシオ・サルガンの古典的名曲"A Fuego Lento"のカバーも、古い価値観にとらわれず、突っ込んだアレンジをしていて聴きごたえがありました。"Electrocardiotango"は、アルバム全体の構成も良く、おすすめです。ちなみに、輸入盤CDもAmazonで買えるようですが、価格差や手軽さを考えると(個人的には)ダウンロードでもいいかな、と思います。


Eléctrico Ardor(エレクトリコ・アルドル)

これ、好みが分かれそうだけれど、どうかなぁ...。変な古いジャーマントランスみたいな曲があったり、女性ヴォーカルを据えたダサかっこいい曲があったり。いやいや、普通にかっこいいし、私は好きですね。妙に耳に残ります。

公式チャンネル?で割と曲をアップしていて、他には古いタンゴ映画をカットアップした"Noti"という曲のPVが素敵。アルバムは、ダウンロードではiTunes Storeでのみ購入できるみたいです。


Ultratango(ウルトラタンゴ)

ピアソラのカバーアルバム、"Astornautas"(アストル・ピアソラのAstorと宇宙飛行士のAstro~をかけている)を出しています。ドラムンベースというか、ほぼジャングルの『リベルタンゴ』とか、アナログリズムマシン丸出しの『ミケランジェロ'70』とか、微妙に完成度の低いアレンジをやっていて面白いです。

オリジナルでは、"Rosa Porteña"という曲が、Fresh Fruitsあたりの古~いダッチハウスまんまで懐かしいですね。あと、なぜか大御所歌手のラウル・ラビエ(70代のおじいちゃん)ともコラボしていて、タンゴ界の懐の広さはすごいなと思いました。
だってUltratangoの公式サイトにこう書いてあるんですよ。「Not your Daddy's Tango.」!


Tango Crash(タンゴ・クラッシュ)

上に挙げた中では、最もアヴァンギャルドかつクラブ寄りの音かもしれません。ドイツ在住のアルゼンチン人デュオによるユニットだそうです。オスバルド・プグリエーセの『ラ・ジュンバ』のカバーでは、原曲の良さを活かしつつ大胆にブレイクビーツやシンセをミックスしていて、上手いなぁと思います。
Beatportでリミックスアルバムが出ています。


Tangothic(タンゴシック)

デビュー盤の"Neurotango"(Amazon mp3)というドラムンベースが、完成度が高くてびっくりしました。ヴァイオリンのギコギコまでサンプリングしていてポイント高い。Beatportで売ればいいのになぁ。他にもダブっぽいのとか、ハードテクノ風とか、いろいろやっているみたいです。


A.P.P.A.R.T

フランス人のソロ・ユニットのようなので、若干主旨からは外れますが、良かったので。Beatportでも出ている"Nu Tango"というアルバム、タンゴからサンプリングした音ネタをだいぶ派手に切り貼りしていて、まさにこういうの待ってた!という感じ。いくつか自分のDJで使えそうな曲もありました。
あとなんだかこの人、同じ手法でフラメンコを切り刻んだ"Flamencotronics"というアルバムも出していて笑えます。


上記以外にも、Narcotango (Carlos Libedinsky)、Otros Aires、Tangwork Companie、Buenos Aires Tango Beat、Electrocutango、Electro Dub Tango、など、それはもう色々なバンドがあるようです。ちょっと、打ち込みが単調すぎたりで、ピンと来なかったものも多いのですが。

番外として、逆方向に振り切れてしまった作品がこれです。ピアソラの"Fuga y Misterio"のハードコア・レイヴ・リミックス。冒頭の「ピアソーラー!」っていうシャウトも失笑ものだけど、フーヴァーシンセとバンドネオンが同時に鳴ってる曲が世の中にあるとは思わなかった。これは許す。

TANGO ELECTRONICO.POR OID MORTALES..FUGA Y MISTERIO. - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=o_K9otJBK40

ところで、うって変わって、日本でタンゴ・エレクトロニコな音楽を作っている人なりバンドって、いるんでしょうかね。
パッと思い当たるのが、小松亮太さんの『タンゴローグ』というアルバムに収録されている、鳥山雄司氏作曲の"Jealous Man (No me hagas Melancólico)"という曲。これ、いきなりサンプリングしたバンドネオンのリフの逆再生から始まるメチャクチャかっこいい曲で、私がタンゴと電子音楽の繋がりを意識したきっかけでもあります。小松さんがバホフォンドに絡んでいたことも嬉しい驚きだったし、この先の続く10年で、よりタンゴ側にもテクノ側も深化した音楽が聴けるようになると楽しいだろうな、と思います。

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