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ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト

日記2014-11-27 16:17

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"小説"のライブ!

コミティア前日の22日夜、とあるライブイベントに行ってきました。このライブに行けるように無理して原稿を頑張ったみたいなところもあって、つまりは大変楽しみにしていたのです。それが、小説『ニンジャスレイヤー』のライブ、題して「ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト」。

まず、ふつう"小説"のライブというところからして説明が必要だと思うんだけど、現在出版されている書籍11巻のうち、いくつかの特装版に付属しているオーディオドラマというのがあって、そこで使用されている楽曲のサウンドトラックCDが最近出たのです(最新刊の特装版に同梱)。で、そのサントラCDのTwitter上での同時再生実況イベントなどがあって、にわかに盛り上がってきたところ、急遽10月27日に公式から発表されたのがこのライブイベント。この時点でライブ当日まで1ヶ月を切っており、しかも、ニンジャスレイヤーに関しては公式が主催するファン参加型の単独イベントが史上初ということもあって、いつもながら翻訳チームによる唐突な発表にTL界隈は騒然としました。

今回は、場所が恵比寿のライブハウス「LIVE GATE」というキャパ300くらいの小バコで、案の定チケットも5分足らずで売り切れてしまったのですが、私は運良く(というか秒単位で発売開始時刻を確認しつつ、繋がらないサイトと戦った結果)チケットを取ることができました。
これについては色々と思うところもあって、昨今のニンジャスレイヤー人気を鑑みると、この規模のハコに収まらないのは自明のことだし、ましてやこれまでも有志によるDJ・ライブイベントが自発的に企画されるほどの熱量のなかで、参加できないヘッズたちの無念さたるや。Ustreamによる中継も提供されたとはいえ、やっぱりね。一方、企画側としては当然小規模なものから実績を積み上げていく必要があるのだろうし、突貫でもまず一回やってみようというスピード感は支持できる。悩ましいところです。

開場から開演まで

で、当日。会場のLIVE GATE(奇しくも忍殺では「シックスゲイツ」「ゲイトキーパー」「ヘルゲート」「オヒガン・ゲート」「トリイ・ゲート」「ゲート、ゲート、パラゲート…」などなど連想できる用語がたくさんあるのですが)に会場20分前くらいに着くと、既に何人か。チケットの整理番号順に並ぶよう誘導される。お客さんの男女比は男性のほうがすこし多いくらいで、未成年NGとはいえ、年齢層もおそらく多少の開きがありそう。状況が状況なので、仲間内で集ってというのもそう多くなく、路上に静かに漂う熱気…ニンジャアトモスフィア。
開場が予定より押しているというのをTwitterの翻訳チームのツイートで知り、続々伝えられる怪しげな会場内の情報にザワザワする。既にライブ感が。

しばらくして列が進み、順に中に入るとやはりそこは小バコ。黒い壁に赤の内装で、さっそく雰囲気が出ている。ステージサイドは映像用のスクリーンが下がっていて、対面にバーカン。回ってきたカクテルのメニューを見てまず笑ったのが、44種類のドリンクに全部ニンジャネームがついている!翻訳チームが仕込んだらしく、どれも本編を読んでいたらニヤニヤしてしまう絶妙なセレクト。残念ながらカウンターが混み混みで注文できる感じではなかったので、ひとまずパスして最前を確保する形で開演を待ちました。

客入りは最終的に何人くらいだったのか、身動き取れないほどというわけでもなく、おおよそ満員の感じ。見渡すとオリジナルのマスクなりメンポを装着したヘッズの方もちらほら。なかでもiPhoneアプリ「NJRecalls」かいはつチーム=サンの自作サイバーサングラスが目立っていました(超かっこよかった)。
開演を待つあいだ、フロアの非常灯に赤いセロファンが被さって人型のアイコンが赤黒になっているのを目ざとく見つけたヘッズがいて、「アイエエエ!」「コワイ!」みたいにNRSが連鎖していったのがヤバかった。

さて、何度か普通の声で諸注意のアナウンスがあったあと、オーディオドラマのニンジャスレイヤー(森川智之さん)の録りおろし?のアイサツでスタート。まずはYouTubeで公開されているPV第1弾第2弾が流れて早速の大盛り上がり。冒頭ロゴの「アイエエエ!」に大勢のヘッズのシャウトが重なる研修されっぷり。みんなすごいな!
それから『カタナ・ソード・アンド・オイラン・ソーサリー』の「ほとんど違法行為」の部分までが流れる。これ、EDMっぽく作っているだけあって、スクリーンでライブハウスの音響で聴くとかなり臨場感がある。カワイイヤッター!

第1部 DJ

PVの上映が終わり、スクリーンが上がると、舞台前面には何もなく後方はシートで覆われていて、上手にCDJとミキサー、Macを備えたDJブース。その奥で忍殺メンポを装着し、両手を合わせてアイサツの姿勢を取るDJあり。あれっ、顔が半分隠れていて定かではないけれど、あの佇まいどこかで…しかしいや、まさかと思いつつ、ニンジャスレイヤー楽曲から冒頭の繋ぎですぐに判ってしまいました。Q'Heyさんだ!

実を言うと、私はQ'Heyさんがごく最近njslyrアカウントをフォローしたのに気が付いていて、でも理由というか繋がりがさっぱり分からなかったのですが、こういうことだったのかと。ご存じのないヘッズの方へ説明すると、Q'Heyさんって東京で最古参の「Reboot」というテクノパーティーを16年にわたって主宰している、ザイバツで言えば間違いなくグランドマスター位階のDJニンジャなんですよ。考えてみれば、テクノをはじめとするダンスミュージックやクラブ描写に深い理解のあるニンジャスレイヤーのイベントで、ギターやロックにも造詣が深く、無類の特撮や怪獣好きで知られるQ'HeyさんがオープニングDJ起用されるというのは、これ以上ないキャスティングなわけです。
それにしたって、こんな小バコのカルト的な重篤読者の集まり(!)に、まさか自分にとって90年代からのテクノヒーローが出演すると思わないじゃないですか。しかも、がっつりニンジャスレイヤーの文法を分かってくださって。いやーなんというか、今年一番のサプライズでした。

選曲としては、序盤からRebootばりの重いテクノで畳み掛け、随所に積極的にサントラの楽曲を挟みつつ、中盤以降はブレイクビーツやロックなど4つ打ち以外のトラックも多めに。今回、演者どころかライブの構成も事前に一切明らかにされないなかで、幕が上がってのオープニングがいきなりガチのテクノだったので、お客さんも初めは戸惑っているようでした。ただ、それも進むにつれてだんだんと熱気が温まっていくのが分かった。最後に再び「ナラク・ウィズイン」に戻ってきて、盛況のうちに第1部が終了。フロアに向かってアイサツをして、舞台をハケていくQ'Heyさん。最後までサービスに徹していました。オツカレサマドスエ!

MCとトークゲスト

ここで幕間にMCのラビット・ロンさんが登場。主にPVのプロデュースやCG制作でニンジャスレイヤー・プロジェクトに参加されている方だそうです。まず、セガとナムコの音ゲーに関するコラボ企画がスクリーンで紹介されたあと、シークレットゲストの呼び込みがあって、それがなんと、オーディオドラマでヤモト・コキとシルバーカラスを演じた、声優の雨宮天さんと藤原啓治さんのお2人!ゲストありとは予告されていたものの、予想以上のビッグゲストの登場に沸き立つヘッズたち。みんなあの「スワン・ソング~」の熱演を聞いてるんだもんね、そりゃあそうだ。

トークは15分ほどでしたが、収録に関する裏話などがいろいろ聞けました。特に面白かったのは、藤原さんが収録前にドラマの脚本を読んで、いわゆる「忍殺語」の誤字脱字をひとつひとつ直していたという話。森川さんなども「マルノウチ・スゴイタカイビル」の発音のしかたが分からずにいたら、翻訳チームに「三井住友ビルディング」ばりに読んでください、と言われたとのこと。

途中で、今日のライブにお客さんとして、声優でナッツクラッカー役の拝真之介さんと、エレクトリックイール役の佐々木義人さんも遊びに来ていることが紹介され、騒然となるというできごともありました。なんという奥ゆかしさ。ドラマのエレクトリックイール=サンのサンシタ演技最高なんだよ!
あと終わりのほうで、ヤモッチャンのキャスティングがTRIGGERのアニメでも継続なのかと匂わせるヘッズに対し、頑なに口を割らないラビット・ロンさんが面白かった。そりゃ言えないですよね。

ところで、会場でこの声優さんのトークショーが開催されている時間帯は、諸般の事情でUstreamによる中継は中断していたそうです。あとで知りましたが、その間、同じCM映像が8回も繰り返されていたとのこと!こんなの普通ならブーイングの嵐だと思うんだけど、いつもながらそれに対する翻訳チームのツイートによる舵取りが絶妙なのと、ヘッズの飲み込みの早さに、あとから#njslyrタグを追いかけて心底感心してしまいました。このCM映像、生放送限定とのことで、会場組の自分はいまだに見ることができなくて、うらやましい。詳しい経緯は、例によってTogetterにまとめられています。

【実況】ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト #0 第二部 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/748464

第2部 ライブ

いよいよ、メインのライブセクション。再びスクリーンが上がって現れたのは、第1部では覆い隠されていたステージ後方の威圧的な和太鼓ドラムセット。ギター、三味線、尺八、そしてサポートDJとして再度参加のQ'Heyさんらプレイヤーのセッティングが完了し、ラビット・ロンさんのMCで始まった1曲目はもちろん、ニンジャスレイヤーがニンジャを殺すときに流れる曲!

メンバーについては、チケット上でも「OMURA・Entertainment Inc. Music Division」とされ、最後まで公式に紹介がなかったのですが、Twitterからの情報を総合すると下記のようです(敬称略)。このうちで三味線と太鼓奏者の方は、サントラ収録時のメンバーでもあるようですね。

  • ギター: PANTHER
  • 三味線: -KIJI-
  • 尺八: 平野透山
  • 太鼓: 茂戸藤浩司
  • DJ: Q'Hey

また、後述するファミ通.comのライブレポートによれば、セットリストは以下。

  1. プレリュード・ゼン~ニンジャスレイヤー ナラク・ウィズイン
  2. エッジ・オブ・ザ・ストラグル
  3. ドラゴン・インストラクション
  4. ア・ガール・フロム・キョート・リパブリック ReMix ver.
  5. デス・リーパー666km/h
  6. ゴジュッポ・ヒャッポ
  7. トドメオサセ
  8. ラスト・ガール・スタンディング
  9. (アンコール)ニンジャスレイヤー ナラク・ウィズイン

収録時と同じ編成によるライブセットというわけではなく、オケとソロプレイヤーのセッションという感じでした。楽曲自体がニンジャスレイヤーの世界観に合致していてカッコイイのはもちろん、それぞれのプレイヤーに見せ場があって、ステージングも熱かった。

2曲目までハイテンションで盛り上がって、3曲目のドラゴン・センセイの尺八ソロでしんみり、ヤモッチャンのテーマはDJソロによるミックス。デス・リーパーはぜひオリジナルのツーバスでも聴きたかったけれど、ギターのPANTHERさんのパフォーマンスもカッコ良かったし、タイキストの超絶乱打に圧倒されたのでこれはこれで。ゴジュッポ・ヒャッポからのトドメオサセでまたギアが一段上がる感じで、最後のラスト・ガールまであっという間。
いったんメンバーが下手にハケたあと、ヘッズの「オームーラ!オームーラ!」のアンコールで再びのナラク・ウィズイン。全25曲収録のサントラからはキャッチーな曲のみの抜粋という形でしたが、ひと通りは演ってくれて物足りない感じはまったくなかったです。ステージとフロアの近さについても、小バコならではの一体感が感じられて、最後まで楽しかった。なんとも言えない余韻を残しつつ、ライブは21時半前には無事終演。いやーすごかったね。

「#1」に向けて

でその終演直後、翻訳チームから出たアナウンスがこれ。今回は#0だったのか!

ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト #0 完。 #1 に是非続きたい。ビガーヴェニュー!フルセット!我々は今回のパワに確信!
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2014, 11月 22

まあおそらく、いろんな意味で突貫だったのは想像に難くなく、PANTHERさんは前日リハまでに急遽ブッキングされたようだし、言ってみれば需要の大きさに対してこれだけの規模でとりあえず実現に漕ぎつけたというのは、企画側にとっても本意ではない…というか「行かれぬから」だったヘッズに対しても、「#1にしたくない」部分はあるのだと思います。

なので、上のツイートでも言及されているけど、大きいハコで、フルセットのバンドでというのはぜひ次は実現してほしいところです。付け加えるなら、重篤ヘッズによるVJなんかがあったらもっと盛り上がると思うんだ。本編の台詞が文字でバーッと流れるとか、やっぱインストのライブだけに、テキストの持つパワとの相乗効果でカラテにカラテをかけて100倍だ。

物理的に一箇所に集ってニンジャスレイヤーコンテンツで盛り上がるというのは、有志によるイベント「ニンジャ万博」でも体験済みの通りで、TL上の実況イベント以上に間違いなく楽しい。機会があれば、公式非公式問わず、こういうイベントが増えるといいなと思います。

思っていた以上に長々と書いてしまいました。簡潔なレポと写真はファミ通.comで。

『ニンジャスレイヤー』のライブイベントが開催、人気アーケードゲームなどとのコラボ企画が続々発表! - ファミ通.com
http://www.famitsu.com/news/201411/22066347.html

M.D.プホール『3つの秋の小品』

タンゴ2014-11-25 23:31

日々に追われているうち、いつの間にやら秋も深まってきました。冬に差しかかる前に、この季節にぴったりの曲についてちょっと書いておこうと思います。

クラシックギターにはあまり詳しくないのですが、いくつか好きな曲があって。特にピアソラの影響で10年くらい前にアサド兄弟のファンになってからは、南米のギター曲が気になっています。
先日、YouTubeを観ていたら、その中でも特に好きな曲のベスト・バージョンとも言える演奏動画がアップされていました。アルゼンチンの作曲家プホールによる『3つの秋の小品(Tres Piezas de Otoño)』より、第3楽章「センテナリオ通り(Avenida Centenario)」。

哀愁を帯びた冒頭のアルペジオ、入れ替わって繰り返される旋律、畳み掛けるような息の合った掛け合い!カッコ良くないですか?演奏しているのはドイツの若手ギターデュオ、Kristjan TammとRoman Hernitscheck両氏によるTamm & Hernitscheckで、今のところ彼らのYouTubeアカウントではこの曲のみ公開されているようです。

そもそもこのプホールの『3つの秋の小品』は、10年以上前に日本の有名なクラシックギター奏者である福田進一さんとエデュアルド・フェルナンデスのデュオアルバムのための委嘱作品だそうで、私も彼らの演奏で知りました。初めて聴いたとき、これはピアソラまんまじゃないかと思ったものですが、それもそのはず、プホールは1957年ブエノスアイレス生まれで、ピアソラのみならず並み居るタンゴ奏者の薫陶を受けた筋金入りタンゴギタリストなのだということです(ご本人のサイト)。

で、人気のある曲らしく、YouTubeで検索するといっぱい演奏動画が出てくるのだけど、正直言って音質・テクニックの両面において決定版的なものが見当たらなかった。そんななか今年8月にアップされたこの演奏を聴いて、これは!と思った次第で。というか、どこだか分からないけれど、こののどかな郊外にある線路のジャンクションというロケーションも最高ですよね。

最近この演奏動画について、作曲者本人からのコメントも寄せられたそうで(FBページ)、曰く「この曲のベスト・パフォーマンスだと思う」とのこと。興味のある方は、三楽章フルバージョンが最近アップされたので、そちらを聴いてみてください。「森林」「木陰にて」「センテナリオ通り」の三楽章からなる14分くらいの曲です。しんみりと、渋く、美しい曲。

Tamm & Hernitscheck - Tres Piezas de Otono (M. D. Pujol) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=OpsoxnnYmF8

『インターステラー』を観た

日記2014-11-25 17:14

22日に公開されたばかりで気になっていた映画『インターステラー』を観に行ってきました。わりと最近『インセプション』を勧められて観て、すっごく面白かったので(これも近いうちに感想を書いておきたい)、トレイラーなどはチェックしていました。なんだか、事前の印象としては「超強いパパが娘を守るため、地球を救うために宇宙へ」という、ははーん、またそういうやつねみたいな感じでした。でもSFとか宇宙とか興味あるし!
以下、続けて感想を書きますが、既に気になっている人は読まずに観に行ったほうがいいです。

映画『インターステラー』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/

観てまず思ったのは、こんなマニアックな映画をおそらく巨額の費用をかけてよく作れたなあと。確かに宇宙冒険映画的な側面はあるんだけど、舞台はどこも地味だし、派手なアクションとかは全然ないし、それが3時間もある。面白かったかというと面白かった…でもすごく感想が難しい。

理屈をすっ飛ばして表層だけ捉えると、無茶苦茶シンプルなプロットで、誰にでも起承転結のはっきり分かる、悪く言えばありきたりのお話なんだけど、理屈を追いかけると途端に難解になる。例えば、「相対性理論」「重力波」「5次元」「ブラックホール/ワームホール」のような宇宙物理学上の概念を教養として持っていないと、シチュエーション理解の前提条件が欠けた状態のままで、素直に感動できない。お、おう、みたいな感じ。

イメージとしては、作品自体が2つのレイヤーに分かれていて、表層的な理解だけでも筋はシンプルで100%楽しめるし、深い科学知識がある人は精巧なシミュレーションとして楽しめるのだろうし、という。なのでどっちつかずの自分は戸惑ってしまったのかな。

少なくとも国内では、感動的な父娘の絆を描いた作品、みたいな触れ込みだったと思うので、それはそういう売り方なだけで、そんなわけはないだろうと思っていました。中盤で登場人物の様子がおかしくなってくるあたりは、来た来た!と思ったし、素直に面白かったんだけど、なんか最終的にはうーんみたいな。「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」を体現したようなシーンもあって、オカルトというかファンタジーというか、もうどのようにも解釈できる余地を残していて。

ただ、宇宙に関して無教養な自分にとっても、知的好奇心をくすぐられる作りにはなっていました。誰も見たことがないワームホール間移動やブラックホールを、最新の科学的知見に基づいて映像化するとこうなるのかみたいなの、純粋に興味あるし、実際観て興奮した。これから、この作品をきっかけに宇宙物理学を志す子供たちはきっといるのだろうし、そうでなくても、興味を持って入門書でも読んでみるかみたいな入口にはなりそうです。relativityやgravityという単語が、こんなに台詞中に頻繁に、しかも本来の物理学の文脈で出てくる作品というのもそうそうないのでは。

私はとてもじゃないけどフラットな批評ができるほど映画を知らないので、個人の嗜好に帰結する好き嫌いの軸での評価しかできないのだけれど、それでいうとノーラン監督では『インセプション』のほうが好きでした。宇宙シミュレーションなら"Gravity"のほうが好きだし、ディストピアを描いたSFならブロムカンプ作品のほうが。映画館ならではの見ごたえは十分にあって楽しめたけれど、ちょっと期待しすぎてしまったな。しかし例えばこれを教材にした物理学の講義があるとしたら楽しそうだし、宇宙やSFに詳しいいろんな人たちの感想なり解説を聞きたくなってしまうようなところはある。

コミティア110でした

漫画2014-11-24 23:13

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昨日23日日曜日は、恒例のコミティアでした。当サークル「鏡像フーガ」は、今年もどうにか4回連続のサークル参加というお勤めを果たし、このサークル名では2年目の年を終えた形です。ブースに来て本を手に取っていただいた皆さま、どうもありがとうございます。

今回はコミティア通算110回目にして30周年記念の拡大開催ということで、新刊がないという事態はどうしても避けたくて、例によって無茶なスケジュールのなか頑張りました。それでなのか、当日は他のサークルさんも気合いの入った本が多くて、たいへん刺激になりました。ゆっくり見て回りたい気持ちはあるものの、作家として参加しているとなかなかブースを離れるわけにもいかず。お客さんに本を手渡しできる瞬間が楽しくて、作品作りをしているわけですからね。

そんな中すごく嬉しかったのは、ブースで隣り合った作家さんが、数年来のファンで既刊もほぼすべて買っているサークル「雲形発着場」の梅木先生で、いろいろとお話ができたこと。今はCOMICリュウで『あせびと空世界の冒険者』を連載されているのは知っていたものの、恥ずかしながら9月に単行本化されたのを知らなくて、慌てて出張ジュンク堂ブースで買ってきてサインしてもらっちゃいました。梅木先生は初期作品から実力がずば抜けていて、絶対プロになると思っていたので、他人事ながらすっごく嬉しい。『あせび~』は人気だそうで早くも来月2巻が出るそうです。

それから、ニンジャスレイヤーのコミカライズ作品のうちのひとつ『グラマラス・キラーズ』を連載されているさおとめあげは先生も、今回はオリジナル創作でサークル出展されていて、本も買えたしグラキラの感想も伝えることができました。改めて、即売会は作家との距離が近いのがいいなと思いました。

そのほか、いつもお付き合いいただいている作家さんに挨拶できたり、タイミング悪くお会いできずということもあったけれど、そのあたりはいつもながらのコミティアで。毎回ありがとうございます。

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ペーパーラリー企画にもこんな感じで参加させていただきました。

今回作った本は『未完のアルマンド』という短編でした。肩肘張らない、ゆるい感じの会話劇を久しぶりにやってみたくて、以前『半音階的ファンタジア』という作品のなかでやりかけてさっぱり上手く描けなかったメタフィクション的な題材を引っぱり出してきました。描いてて、なんだかこういうのだったらいくらでも描けそうなことが分かったので、珍しくはやく続きを描きたいなというモードになっています(こういうのは、すぐ動かないと冷めてしまいがちなのですが)。
ちなみに、個人的に2014年はフルデジタル制作環境移行元年ともいえる年で、発行した4作のコピー誌はすべてCLIP STUDIO PAINT PROで制作しました。ようやく、だんだんと使いかたが分かって楽しくなってきたところ。

コミティア終了後は、izさんの車で送ってもらいつつ、watさんフミアキさんと合流して、思いがけずBody Informフルメンバーで焼肉打ち上げ。はー、本当にお疲れさまでした。

蘆野ゆり子 カリグラフィー作品展

クラシック2014-11-04 00:49

2日日曜日、中野Space 415で開催されているカリグラフィー作家蘆野(あしの)ゆり子先生の作品展へ行ってきました。会期は1日から6日までで、入場無料。場所は、中野駅からしばらく歩いて野方警察署を奥に入ったあたりにある、住宅の一角に設けられたギャラリースペースです。

私が蘆野先生の作品を知ったのは今年の春、バッハの受難曲を聴き始めてBCJのコンサートに通いだしたころに見かけた、1枚の公演チラシがきっかけでした。淡野弓子氏率いるムシカ・ポエティカによる「マタイ受難曲」のコンサートのためのもので、そのコンサート自体は都合が付かず行けなかったのですが、チラシの作品があまりにも印象的で、手元にとっておいたのでした。

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マタイ受難曲の膨大なテキストが、余すところなく一言一句整然と書き込まれていて、しかも、コラールや主要なアリアが配色・配置ともに厳密なルールに従って表現されているのに気づき、ショックを受けました。バッハが音楽によって実現した「完全性」を、これほどまでに忠実にビジュアル化した作品があったのかと。
記載されていた作者名で検索して、春の時点で11月に日本で作品展が開催されるということを知り、以来数か月間ずっと、生で作品を拝見できるこの機会を楽しみにしていました。

蘆野ゆり子さんは、ハインリヒ・シュッツやJ.S.バッハ、メンデルスゾーンといった、主にドイツの宗教音楽家による作品をモチーフにカリグラフィー作品を発表されているアーティストです。公式サイトのプロフィールによると、特にドイツ国内で勢力的に作品展を開催されていて、ここ数年は東京でも年1回のペースで定期的に行われているそう。

昼過ぎにお邪魔すると、蘆野先生ご本人がいらして、気さくに話しかけてくださいました。さらに、音楽に関してもカリグラフィーに関してもまったくの素人の私に、展示されているそれぞれの作品について丁寧に解説していただけて感激しました。

まず、例のバッハ「マタイ受難曲」の実物を拝見して驚いたのは、思っていたよりも画面が小さかったこと。印刷物のものがあまりにも文字が細かく描きこまれているので、大きな作品だと思っていたのですが、普通にものすごく字が細かかった。手書きというのがにわかに信じられないくらい、一切の乱れがなく精緻に書き込まれていて、ため息が出てしまいました。
公式サイトに、小さいサイズながら作品全体の画像が掲載されているのでぜひ見てほしいのですが、作品最上部中央に冒頭の合唱、最下部に終曲が配置されていて、中央の十字架を形成する部分が主に福音史家とイエスによるレチタティーヴォの全テキストになっています。両サイドにはコラールが上から順に並べられ、そのさらに外側にはアリアと伴奏つきレチタティーヴォが配置されていますが、大きく画面左側が第1群に対して右側が第2群というように分かれています。そして、十字架の中心にあるのが、何度も繰り返される重要な"O Haupt voll Blut und Wunden"のコラール。

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テキストはすべて声部ごとに色分けされていて、全体として非常にカラフルに映ります。さらにアリアとレチタティーヴォでは厳密に書体が使い分けられている。バッハ作品に親しんでいる人には分かると思うのですが、この究極の構成美はまさしくバッハの音楽の魅力そのもので、それを音以外の形で表現できるということに改めて感銘を受けました(バッハの自筆譜自体が、整然と美しくしばしば絵画的であるわけですが、それは除くとして)。
驚くべきことに、この作品は今までに計8枚書かれたとのことです。

会場を見渡すと、むしろバッハがモチーフの作品は少なく、他の声楽曲の作品が多いようでした。折り重なるような複数のダイナミックな曲線に沿ってびっしりと書き込まれたメンデルスゾーンの「エリア」、荒々しい黒い画面に鮮烈な色彩と金箔を用いて制作されたハイドンの「天地創造(序曲)」のような大作の他にも、一見してポップな小品もたくさん。
紙ではなく、皮に書き込まれた作品も少なくなく、伺ったところ、書き味はさほど紙の変わらないにも関わらず、風合いがひとつひとつ全て違うため、作品のイメージに合わせて選んでいるのだそう。

そういえば画材に関しても教えていただいて、実際にいくつかのペンで書き分けるところを実演していただきました。通常カリグラフィーで使用する先が平らになったペン先(スピードボール)のほかに、マンガの画材でいう丸ペンのような細いもの、平筆、それに見たこともないようなゴツい特殊なペンも使用するそうです。インクにあたるものとしては、主にアクリルガッシュを使用。

蘆野先生の多くの作品に共通する点は、思い切った曲線を用いたリズム、躍動感の「音楽的」な表現。私は不勉強にして、シュッツをはじめ元になっている多くの作品を聴いたことがないのですが、きっと知っている人にとってはテキストを目で追っているだけで、まさに曲が立ち上がってくるような体験をするのだと思います。私は先生のいくつかのバッハの作品を観たときにそう感じました。

変な話、ただ文字をレイアウトするだけであればCGでもできるわけですが、この場合それが一文字一文字手書きであるという点に、深い意味があると思います。つまり対象の音楽への、祈りに似た一途な思い入れがあればこそ、完成に至るのだという。

こういった試み、つまり宗教曲をテーマにカリグラフィー作品として音楽をアートとして表現するということは、ドイツでも例のない試みなのだそうです。そもそも、現在のカリグラフィーの主流が「崩して書く」方向へ行ってしまい、こんなにも整然と「読める」文字としての作品は、いかにも古典的と評価されてしまうとのこと。しかしそれでも、蘆野先生曰く、この一連の作品においては読めるということこそに意味があり、その点にこだわりを持っておられるのだそうです。

会場ではチェンバロなどの生演奏もあり、ポスターやポストカード、カレンダーの販売もありました。なおこの記事中の写真は、そこで購入したポスターとカレンダーのものです。

公式サイトのギャラリーのページに、他の作品も多く掲載されています。それにしても実物を鑑賞するというのはとても刺激的で、期待以上の体験でした。

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上の作品はバッハの「ミサ曲ロ短調」から、グロリア。2015年カレンダーの表紙になっている作品です。

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