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タンゴ・エレクトロニコとの出会い(前編)

タンゴ2012-01-11 22:27

Tango Electronico

3日、年始セールだというので、久しぶりにディスクユニオン新宿本館4F(タンゴの中古CDがそこそこ揃っているお店)に行きました。アントニオ・アグリのリーダーアルバムと、少し迷って、Gotan Project(ゴタン・プロジェクト)の2010年のアルバム『Tango 3.0』を購入。
Gotan Projectは、タンゴとエレクトロニック・ミュージックの要素をミックスした、パリを拠点とするバンドで、あのXL Recordings傘下の¡Ya Basta!レーベルからアナログも出ているので、ハウス界隈ではご存じの方もいると思います。私も、あわよくばDJで使えないかとレコードを買ったりしてきましたが、正直さほどハマらなくて。というか、基本的にラウンジ・ミュージックなんですよね。

で、とはいえ私は、以前からタンゴとエレクトロニック・ダンスミュージックの相性の良さに、ただならぬ期待を抱いていました。タンゴほど強力な4つ打ちの音楽なんて他にないし、バンドネオンの複雑なリードの組み合わせによる音色は、構造からして「電気を使わないシンセサイザー」そのものだし。なにより、タンゴって本来、各国の雑多な音楽を、雑多な楽器で演奏する、めちゃくちゃなミクスチャー音楽だったわけだし。

件の『Tango 3.0』は、良くも悪くもいつものGotan Projectそのものだったんですが、ふと気になって調べてみると、意外な事実が。というのは、2000年代前半あたりから(つまりここ10年間くらいで)、アルゼンチン本国や隣国ウルグアイを拠点とする、いわば「エレクトロ・タンゴ・バンド」が続々と現れて、ちょっとしたブームになっていたんですね。しかも、サウンドの幅もそれなりに広く、オーソドックスなタンゴの小編成に単にシンセを加えたフュージョンっぽい音楽から、サンプラーやリズムマシンを使ってフロア向けに大胆にカットアップした、ラディカルな音楽まで、様々。

これらは、大雑把に「エレクトロ・タンゴ」とか、「タンゴ・エレクトロニコ」とか呼ばれているようです。ただ、前者だとまた、エレクトロとエレクトロニカ、エレクトロハウスの違いについて言及せざるをえなくなるので...個人的には、後者を推していきたいです。Tango Storeなどでその表記でカテゴライズされているのと、アストル・ピアソラが1970年代に電子楽器を採用したバンドで「Conjunto Electrónico(コンフント・エレクトロニコ)」を名乗っていたこともその理由です。

というか、この種の実験(古典的なタンゴ編成と電子楽器の組み合わせ)において、やはり先駆者はピアソラなんですね。タンゴの楽器編成に、最初に電気(=エレキギター)を持ち込んだのも、ピアソラだとされているそうですが。
以下は、後述するバンドTanghettoと、Otros Airesのメンバーそれぞれが語るピアソラからの影響について、インタビューの抜粋です。

Discovering Piazzolla allowed us to embrace Tango. We could listen to it. After Piazzolla, we discovered other composers like Pugliese and Troilo. He was the gate to enter the Tango.
Tanghetto Interview
I feel that they were influenced by Piazzolla and have stepped beyond. We are based in traditional music. Our roots are all the traditional. Most electronic bands are based in Piazzolla's work.
Otros Aires Interview

シンセやハモンドオルガンなどを導入した「コンフント・エレクトロニコ」では、『トロイロ組曲』などの超名曲を残しながらも、ピアソラ自身は後年、こうした方向性には否定的なコメントを残しています。いわく、「電子音には生命がないんだ。誰がやっても出るから、人間の価値はあらわれない。(『ピアソラ タンゴの名盤を聴く』2000年、立風書房、p.121)」。
とはいえ、70年代当時と現在とでは、電子音楽にまつわる技術の進化は比べるべくもないし、今ならもっと面白いことができても不思議じゃない。そんな思いで、今また、いくつものバンドが「タンゴ+電子音楽」というテーマに挑戦しているように見えます。

難しいのは、ただカッチリしたBPMでレコーディングした生楽器によるオケと、打ち込みのリズムトラックをミックスしても、大抵の場合、単にダサくなってしまうんですね...。テンポの緩急によるダイナミクスの表現って、タンゴ特有のグルーヴのかなり大きな部分を占める要素だと思うんです。巨匠のバンドネオン・ソロなんて、原型を留めないくらい"タメ"を作るし、それが何とも言えない味になったりするわけで(Los Mareados - Daniel Binelli (Juan C. Cobian) 2004 - YouTube)。
なので私は、やるなら大胆に解体・再構築して、濃厚なエッセンスだけを取り出すくらいのほうが、むしろタンゴらしくなるのではないかと思います。もしピアソラが今の時代に生きていたら、中途半端ではなく、徹底的にやったでしょう!

と、長くなりすぎたので、この記事続きます。

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