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3月18日、VINYLHOUSE20周年でライブします

活動2017-03-12 17:24

久々のライブ告知です。来週の土曜深夜、中野heavy sick ZEROで行われる「VINYLHOUSE」20周年イベントにソロのライブセットで出演します。

vh20flyer

VINYLHOUSE(ビニールハウス)は中央大学の学生を中心としたテクノ・ハウスサークルで、現役時代は私も所属して部長を経験しました。というか、ついこの前同じヘビーシックで10周年をやったばかりなのに、もう20周年!という感じ。

このサークルでの思い出を書き始めると話は尽きませんが、とにかくここまで現役の学生さんたちがバトンを繋いでくれたことはうれしいですね。で、いい機会なので自分も初心に返って、ハードウェア機材によるライブに再挑戦します。

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今回はこんなセットを予定しています。TR-8を中心に、monologueとTB-3、エフェクターはKPQとMicroVerb 4。事前にがっつり組んでいくようなプログラムにはならず、ほとんどその場で組み立てていくイメージです。なんとかなる。

MicroVerbはmonologue用に先月ハードオフで6,000円で購入しました。100エフェクトに各パラメーター2つのシンプルなエフェクターですが、かえって以前使っていたQuadraVerbよりも手早く操作できて便利。ラックサイズですがこう見えて本体も電源アダプターも軽いので、ライブで重宝しそうです。

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KPQは主に全体にかけるディストーション&リバーブ用途で、アナログミキサーにセンドリターンで接続しています。これでもかなり機材を減らしてコンパクトにしたつもり。さすがにこれ以上減らすと淡泊になってしまうので、こんな具合で。あとはひたすら練習!

チャージ2000円だそうです。もしかしたらちょっと内輪っぽいパーティーになるかもしれませんが、勝手知ったるヘビーシックですので楽しくできそうです。よかったら遊びに来てくださいね。今年はまたあちこちでライブしたいと思っており、個人的にはその足掛かりになればと思っています。

monologueを買いました

テクノ2017-02-19 20:32

先月のことですが、コルグのアナログモノシンセ「monologue」を買いました。最初に発表されたときはあまり興味がなくて、またモノシンセか~みたいな感じだったのですが、動画を見聞きしたり実際に店頭で触ってみたときの印象が良くて、なおかつ自分のライブセットに組み込むイメージができてきたら、俄然欲しくなってしまい。

monologue - MONOPHONIC ANALOGUE SYNTHESIZER | KORG (Japan)
http://www.korg.com/jp/products/synthesizers/monologue/

というかこれで税込3万円を切っているの、本当に信じられないですよね。きっとmonotronに始まりmonotribe、volcaなどを経たコストダウンのノウハウや生産ラインの最適化みたいな、地道な企業努力の賜物なのでしょう。買うかどうかを検討したときに、この価格対性能だともはや迷う余地がないです。あとは置き場所をどう確保するかとか、そういうほうが問題になる。

monologueは5色展開なわけですが、私は赤にしました。周りで買った方と被らなそうなのと、個人的にElectribe SXとかみたいな赤いマシンは相性が良いみたいなので。ショップは例によってイケベさんのWeb通販で。注文して2日めに届きました。

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シンセとして良いところがたくさんあるので、先に悪いところを書いてしまうと、名前が良くない!なぜこんな検索しにくい名前をつけてしまったの…。minilogueとmonologue、いまだに咄嗟に話題に出すときにごっちゃになるし、volcaみたいにユニークな命名にすればよかったのにね。これなら無機質な型番のほうがいい。

もうひとつ、ツマミが良くない。electribe2みたいなのっぺりした黒一色のものなので、現在のバリューがぱっと見で分からない…。まるで暗いところで使うことを想定していないみたい。背面の木製パネルとかデザインに凝るのに、どうしてここに無頓着なのかよくわからない。ESXやvolcaで採用されていた切り欠きのあるツマミが大好きなので、あれが良かったなあ。

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なんですけども、すごくかわいいですこのシンセ。そして見た目のわりに狂暴な音…ヘンな音が出る。パラメータはそんなに多くないし、EGとかも簡略化されているのに、その分ほかを少しいじっただけでダイナミックに変化する。シンセってやっぱパネルやスペックだけじゃなくて、触ってみないと分からないものです。

逆に、狙った音を作るのには、そこそこの慣れが必要なのかも。適当に触っているだけだと迷子になりやすいというか。その意味でも、音を作ったら作りきりじゃなくて、デジタル的に気軽にストアできるのはいいですね。増えてきたらPCでバックアップを取るのも簡単だし。

パラメータのなかでは、VCO1にも2にもあるSHAPEがおもしろい。矩形波だけじゃなくノコギリ波や三角波にもかけられるし、カラーががらりと変わって楽しい。フィルターとまた違う意味で周波数的なピークの位置も変わる。これ自体にもLFOがかけられるというのも、あんまり実用性ありきの設計じゃなくて好きです。だいぶハチャメチャな音になる。テクノ以外のどんな音楽で使うんだ…。

ツマミは余っていたものを移植して改良しました。下の方ちょっと隙間ができるけど、埃に気をつけていれば大丈夫。もっと合うツマミがバラで買えないか探してみようかな?

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鍵盤ないほうがいいという感想をちらほら聞きますが、私はあってほしい派です(弾けないのに!)。少なくともリボンコントローラより全然いいし、refaceまでとは言わないけれど比較的カッチリした作りの、クリック感(?)のある鍵盤で好きです。ミニ鍵や安いMIDIキーボードでよくあるフニャフニャのやつじゃない。

シーケンサーも単純明快。ステップ数も演奏しながらリアルタイムに変えられるし、4つ打ちキックに対して3ステップとか7ステップのウワモノを足したい自分の用途にはぴったりです。モーションシーケンスの使い勝手の良さも言うことなし。

イニシャルから音を作るときに便利なのが、SHIFT+PLAYでパネル上の操作子の状態を読み込むパネル・ロード機能。いまどきのシンセってこの機能普通についてるの?

それと、地味ながら感心してしまった点といえばもうひとつ、設定のなかのノブ・モード機能で、今鳴っている音…つまり電子的な値と、ツマミ位置の物理的な値に齟齬がある場合に、「どのように」合わせるかを選択できるところ。これって、例えばライブとかでプログラム(パターン)を変更したあとでツマミを触ったときに、急激に音が変わる事態を回避できるわけで、こういうの、すごく欲しかった。

音を作りながら遊んでいると、たまにEA-1で作ったみたいな、自分にとっては慣れ親しんだ懐かしいギラギラした音が鳴るので、コルグのシンセだなあと思います。アナログシンセを触っていて、アナログモデリングシンセを思い出すというのも変な話だけれども。ただ、まだどこをどう触ったらそういう音になるのか、ふんわりとしか分かってないので、これからいろいろ試してみたい。

最終段にかかるドライブエフェクトはあるものの、空間系のエフェクトが一切ないので、ライブで使うとしたらなにかしら足したくなりますね。音声出力もモノラルなので、KAOSS PADもいいけれど、せっかくならちょっとしたギター用のエフェクターなんかも試してみたくなります。

おとといのICONのインタビュー記事とかもおすすめです。

ICON ≫ 製品開発ストーリー #32:コルグ monologue 5色のカラバリも魅力! 3万円以下で買える100%アナログ音源のマイクロ・シンセサイザー
http://icon.jp/archives/13875

2/19 23:00追記:
書いてから思い出したことをひとつ…なんとmonologueには電源アダプタが同梱されていません。単体で電池駆動するからなのですが、常に電池の残りを気にしながら使うのもあれなので、私は別売りの電源アダプタを買いました。コルグのKA350という製品で、2,700円くらいです。楽器店の店頭でも買えますし、例によってAmazonだともうちょっと安いみたい。石橋楽器さんにはありました。
このアダプタは、他にもvolcaシリーズ、KAOSS PADシリーズ、monotribeなどとも共通なので、持っていて損はないかと思います。もちろん、電気的な規格が合うものであれば、必ずしも正規品でなくても大丈夫なのでしょうけども。

年初のあれこれ

日記2017-01-21 00:11

あけまして…ってのが許される時期では全然ないけど、新年一発目の記事です。

というか今年は散々で、暮れからの風邪を大いにこじらせてしまい、おかげで年末年始は一切どこにも行けず静養していました。インフルでもノロでもなく、単に風邪。たまの外出といえば病院くらいなもので、それでも3週間以上も咳が収まらないという有り様!

とはいえだいぶ良くなっては来ていて、お仕事などは普通にこなしておりますのでご心配なく。

もともと大晦日は特に決まった予定もなく、それがかえって気を抜いてしまったというか、良くなかったのかも。30日の冬コミまでが公私ともにけっこう詰まっており、気を張っていただけに、終わった途端に。

冬コミのことはサークルのほうのブログに書きました。今回は自サークル参加ではなく、いくつか寄稿したのでそのお手伝いで。夏コミは申し込み予定です。

『ニンジャ学会誌 895号』に寄稿しました - R-9のおでかけ修行ハウス改善
http://epxstudio.hatenablog.com/entry/2017/01/06/002009

年初の休養のなかでハマっていたものについて、いくつか書きます。

Netflixの連続アニメ作品『トロールハンターズ』。ギレルモ・デル・トロ監督総指揮のアニメ作品で、シーズン1の全26話の配信が1月から日本でも始まりました。夜と影のなかでしか生きられない地下の生命体「トロール」たちを、邪悪なトロールから守る「トロールハンター」に指名されてしまったフツーの少年ジム・レイク・ジュニアと友人たちの冒険物語です。

子供やファミリー向けの作品として企画されたという本作は、とにかくオーソドックスな導入部から、ぐいぐい(いつもの)デル・トロ節の暗黒ゴシックファンタジー世界に引き込んでいく流れが見事で、毎晩2話くらいずつ進めて、先日ようやく完走しました。面白かった!太っちょで、いつもおどけている相棒のトビーのキャラクターが最高。トロールたちのデザインも幅が広く、愛嬌があって、味方・悪役問わずどいつもこいつもキャラが立っている。

でもこれ、26話も使って結局のところ大きな問題が全然解決していなくて、そこだけがものすごい不満。シーズン2の制作が前提なのだろうけど、もう少しちゃんとオチをつけてほしかった。1話1話は申し分なく楽しめるのだけどね。

トロールハンターズ : Netflix
https://www.netflix.com/title/80075820

他に観た映画…Netflixにわりと観たいものがちょこちょこ追加されていて、随時消化しています。劇場で観たニール・ブロムカンプの『チャッピー』も、ソフトで買おうと思っていたところに追加されていたり。きちんと観直すと、SF的にはめちゃくちゃ大雑把な作品なんだけど、アンドロイドものの基本を押さえているし単純にエンターテイメントとしてカッコよくて好きだ。WOWOWとかで放送されていたのと同じ規制版(ソニー編集版)だったのがいただけないけれども。

デンデラ』は噂には聞いていて前から観たいと思っていたのが、ようやく観れた。もう開始30分で壮絶!姥捨て山伝説の先の物語という、ある意味シチュエーションありきのドラマなので、入口はぐいぐいと、最終的にどっちの方向に持っていくのかという点に注目していたら、意外な方向に進んでいった。復讐譚としては必ずしも完璧な作品ではないけれど、そういう結末にしたかったのか、というのはよく理解できるし、私はやはり観て良かった。これは語り草になるわけだ。

ベルリン・コーリング』は2008年に公開された映画。主演はベテランテクノDJのPaul Kalkbrennerで、ドラッグに溺れてボロボロになっていく主人公のDJ Ickarusの「役」を現役の本職DJが演じたという「フィクションの」作品です。とにかくKalkbrennerの体当たりの演技がすごいし、ベルリンのクラブシーンをめちゃくちゃリアルに切り取っているんだろうなーというのは分かりました。

でも強く感じるのは、東京はこれとまったく違う環境でよかったなあということ。ドラッグと音楽が完全に分離していて、若者が道を踏み外すことなく安全にテクノにのめり込めることがどれだけ幸せなことか!ベルリンのクラブに対する憧れは全然なくなりますね、こういうのを観てしまうと。

主人公がレーベルのオフィスでめちゃめちゃに暴れて、ターンテーブルを投げつけてぶち壊すシーンが一番心が痛んだ。ドラッグと、そこから脱却するための薬、という2つの薬に翻弄され続けた主人公が最後に頼るものは…そこのところのオチへと向かう流れを思い返すと、テーマは明確です。あと、主人公の父が教会の牧師兼オルガニストで、いいところでバッハの曲が流れるんだ。これは意外な驚きで、嬉しかった。

同じ日に観た『レジェンド・オブ・メキシコ(Once Upon A Time In Mexico)』は、ロバート・ロドリゲス監督の『デスペラード』の続編。前作からスケールアップして、キャラもお話も複雑になっただけに、いまひとつストーリーに乗り切れなかった。でも、例によって音楽とアクションのカッコよさだけを追求した、IQゼロのバカバカしいメキシカンなアクションが楽しめて大満足。ロケランギターケースがありえない方向に進化していて笑えた。サービス精神だなあ!

なんか、映画の話ばっかりになってしまいました。
今年もこんな感じで、興味を持ったことなどについての雑記を書き連ねていきます。

Undertale

ゲーム2016-12-12 16:40

2015年に発売され、既に名作と名高いインディーゲーム『Undertale』をプレイしたので感想を書いておきます。初回クリアまで6時間、有志による非公式の日本語化パッチを利用しました。以下、ネタバレは書きませんが、気になる方は事前知識を何もいれずに遊んだほうがいいですよ(私もそうした)。

トレイラーにもあるように、「誰も死ぬ必要のないフレンドリーなRPG」。バトル画面のコマンドに常に「慈悲(MERCY)」があって、モンスターの生殺与奪の権利がプレイヤーに委ねられている。けど、シリアスに向き合うというよりかは、ナンセンスギャグ的なおふざけの一環として提示されるので、リラックスして自分の心に正直に。

とにかく、確かに名作なのでした。これを楽曲を含めてほとんど一人で作ったというToby Fox氏は間違いなく天才で、偏執的な作り込みの細かさと、可愛らしい見た目のなかにどこかいびつな狂気が混在している感じは『Fez』のPhil Fishを彷彿とさせる危うさがある(ただあれはどちらかというと未完成さが際立ったのに対して、こちらは完成されている)。もちろん、『Mother』や『Moon』を引き合いにこのゲームを語るのもアリだと思います。

ゲーム性に関しては、普通にRPGだと思っていたら、けっこう弾幕シューティングの要素が大きくて意表を突かれました。敵のターンではひたすら自機のハートを操作して弾幕を避ける。この戦闘の演出が手を変え品を変え、本当にバリエーション豊富に楽しませてくれる。一方で、パズルやアクションの要素のあるダンジョン攻略は比較的簡単な部類で、これはおそらく演出上どこにウェイトを置くかという判断なのかなと思いました。シナリオと雰囲気を楽しんで欲しかったのだろうなあ、というのは想像に難くない。

で、そのシナリオなんですけども、こういうゲームシステムなので、ある程度はオチの予想はつくわけですね。つまり、自分の起こした行動に対して、最後の最後には何らかの清算があるのだろうみたいな。なので当然プレイヤーとしても色々と足掻いてみるんだけど、やむを得ず戦うほうを選ぶ、的な場面もあり…しかしその選択に導くまでのメタフィクショナルな演出が上手いのです。もっと言うと、「普通のゲームならさすがにここで諦めるよね」みたいなシチュエーションが次々に出てくる。そこでどうするか、というのが鍵になる。

クライマックスの伏線回収パートの雰囲気も私は大好きで、胸に迫るものがありました。作者はこれを見せたかったんだな、みたいなね。それと、音楽は本当に掛け値なしに素晴らしくて、特にUndyne戦やAsgore戦のような曲はスーファミRPG世代にはたまらない熱さがありました。

ただ、どうーしても納得がいかなかったのがFloweyまわりの演出…。こんなにも和解と赦しの尊さを美しく描いているのに、そこでまったく話の通じない、悪意しかないキャラクターを出してしまったら意味がなくない?みたいな。このパートだけすごく不愉快なんだ。大事なテーマが濁っている。
あまりにも納得がいかなかったので、何かバックグラウンドがあるのだろうと2周目のお話の概要もざっと先に読んでしまったけど、それでもなんかピンと来ない。変な話、キャラクターを見殺しにしたことを後悔させられるのとかは全然良くて、それこそ2周目に噛み締めればいいわけですよ。違う違う、もっと単純に、私はこのゲームで感動したのだから、最後まで感動して終わりたかったんだ…!

あとは、全体的に漂うナンセンスジョークのノリが合う合わないみたいなものもある。有志の日本語化パッチの翻訳も、すごく頑張っているのは伝わるんだけど、どうしても冗長になってしまう。ただ、真に迫るメッセージをかわいらしいユーモアに包んで、押しつけがましくなく伝える良さは随所にある。

いろいろと惜しいところはあるものの、それにも増して飛び抜けた部分が光る佳作でした。

Steam:Undertale
http://store.steampowered.com/app/391540/

ジェイ・クリストフ『ストームダンサー(上)』

日記2016-12-06 10:22

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11月末に刊行された小説『ストームダンサー(上)』を読み終えました。原作は、オーストラリア人のジェイ・クリストフ(Jay Kristoff)氏による"The Lotus War"三部作の一作目 "Stormdancer"(2012年)で、翻訳は我らがダイハードテイルズの本兌有+杉ライカ両氏。二か月連続刊行が予告されており、今月末に早くも下巻が出ます。

ロータス戦記 1 ストームダンサー 上 | ジェイ・クリストフ, toi8, 本兌有+杉ライカ |本 | 通販 | Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4047307114/

以下、なるべく本筋のネタバレを避けて。

戦闘少女+グリフォン=ストームダンサー

空を舞うスカイシップ群。蒸汽駆動甲冑に身を包んだ侍たちが構えるチェーンソーカタナ。 〈蓮〉排煙で汚染された帝都カイゲン。死滅土(デッドランド)が急速に広がりつつあるシマ列島。シマを支配するショーグン・ヨリトモから、伝説の獣〈雷虎〉(アラシトラ)の捕獲を命じられたユキコは狩猟の旅に出る。

「ニンジャスレイヤー」の 翻訳チームが仕掛ける 和風スチームパンクの傑作!

とても面白かった。当然ながらニンジャスレイヤーとはまたまったく違った読み味で、新鮮な気持ちで楽しめました。上のKADOKAWAによる公式の紹介文の通り、歴史上の日本がモチーフの架空世界「シマ帝国」を舞台とした、和風スチームパンク・ファンタジー。主人公のユキコは16才の少女で、過酷なディストピアである帝国と、その忠実な臣下である父親との葛藤のなかで、伝説上の生物グリフォンと出会う。やがて彼女は「ブルウ」と名付けたそのグリフォンとともに世界に立ち向かっていく、というようなストーリーです。

私は原作を知らなくて、なおかつここに邦訳されている上巻までしか知らないので、今後どうなっていくのかは分かりません。が、動と静でいうとこの本の少なくとも前半部分は「静」です。とにかくディストピアであるシマ帝国、そして首都カイゲンの空気が様々な視点から、手を変え品を変え、緻密に描かれている。時に設定の枝葉を辿ったり、あるいはユキコの過去を行きつ戻りつしながら、ゆったりとしたペースで進んでいくので、初めはじれったく感じるかもしれません。特に、『ニンジャスレイヤー』における情景描写の圧縮率と、物語が展開するスピード感を比べると全然違う。

ただ、中盤から激しい「動」の描写があり、まさしくストーリーが動き始めると、「静」で積み上げてきたものが生きてきます。ある事件に際して、まずありありと情景が目に浮かぶ。そのうえで、この世界ならこうだろう、このキャラクターならこう動くだろう、というのがすとんと腑に落ちる。ここにまずカタルシスがありました。そうなると、次はどうなるんだろうという感じで、先が気になってどんどん読んでしまう。

和風スチームパンク、というのは確かにキャッチーな世界観だけれども、物語全体のモチーフとしてはもっと色々な作品が透けて見えてきます。古今東西、動物と少年少女が心を通わせて世界に挑むエンターテイメントはいろいろありますが、その延長線のひとつという感じ。『もののけ姫』のような、ある種ステレオタイプな人間vs自然の構図もあるし、ディスコミュニケーションを勇気で乗り越える様は『ヒックとドラゴン』のようでもある(ブルウをたびたび猫に喩えるところも似ている)。

あるいは、ユキコとブルウの関係性をフジキドとナラクのそれと捉えると、『ニンジャスレイヤー』との共通点も見えてきます。ユキコあるいはフジキドは、この世ならざる存在とたった一人心を通わせることができるがために、相対する人間たちの犯す罪との間で悩み、それでも人間性を捨てきれず、運命に逆らっていく。その意味で、ニンジャスレイヤー翻訳チームが『ストームダンサー』の翻訳を手がけたというのは、とても自然で、かつ意義あることのように思えます。両者は出会うべくして出会った。

この邦訳作品が発表されたとき、そしてTwitter上で「試し読み」として冒頭のいくつかの章が公開されたとき、翻訳チームは翻訳ができたんだ!という意味不明な、かつ超失礼なコメントがまず浮かびました。Kindleには英語版の原書があって、なおかつ冒頭部分がサンプルとしてダウンロードできます。

Amazon | Stormdancer: The Lotus War: Book One (Lotus War Trilogy) [Kindle edition] by Jay Kristoff | Science Fiction, Fantasy, Mystery & Horror | Kindleストア
https://www.amazon.co.jp/dp/B008XKBUUS/

読み比べてみると、情景描写については原作の通り丁寧に、セリフやアクションに関しては大胆に、とても巧みに訳されているのが分かります。地の文で書かれていることも積極的にセリフ扱いに変更されていて、すっと入っていける。英語ではいまいちよく分からない、キャラクターによる口調の使い分けもいいですね。

原書の表紙では、例によって「濃い」アジア人風のビジュアルであるところのユキコも、toi8さんのイラストはしっくりくる。ティピカルな戦う強い女の子像が単純にかっこいいです。一方で、マサルやカスミといった大人のキャラクターのイラストはいまひとつピンと来ないところもあって、これはソフトな絵柄ゆえにというか。

読んでみて我ながら意外に思ったのは、わりと年齢的に近いせいか、カスミやマサル(ユキコの父親)のほうに感情移入してしまったことです。主人公はあくまでもユキコなので、作中では彼女の物事に対する考えかた…つまりは子供らしい純粋さとか潔癖さというものが、「大人たち」の凝り固まった意見と激しく対立する場面が繰り返し描かれる。私が10代のころにこれを読んでいたら、もしかしたらもっとユキコのほうに過剰に肩入れしてしまい、それぞれのキャラクターに対してまた違う印象を持ったかもしれないなと思いました。

さて、この上巻までを読んだところ、まだまだ物語が動き始めたばかりというイメージなのですが、実際、次の下巻である程度のカタはつくのかな?翻訳チームの杉さんによると、「下巻は、ディストピアなりに割とほのぼのしていた上巻からうってかわって、かなりブラッディです。終盤はそれまでのタメが一気に爆発するカタルシスがあります。」(【日報】「リフォージング」と「ストームダンサー」が好評発売中、そしてレディオで言い忘れたこと|ダイハードテイルズ|note)とのことなので、期待してしまう。

そして『ストームダンサー』の面白いところは、すでに英語圏のレビューがたくさんあることですね(『ニンジャスレイヤー』はなぜないのかという疑問はこの際置いておこう…モーゼズ=サンのプリンターが壊れているからだよ!)。ユキコやブルウ(Buruu)を描いたファンアートもちらほらある。YouTubeなんかを検索すると、女の子が作品の良さを熱く語っている動画レビューが出てくるのも面白いです。こういうヤングアダルト向け?ファンタジー小説って、海外では女性読者が多いのかなあ。

YouTubeには、『ストームダンサー』第一部より第11章「アラシトラ」をテーマにしたサウンドトラックもありました。Jay Kristoff氏本人のアカウントで公開されていて、Twitterでも言及があることから、原作者公認と思われる。素晴らしいです、これ!

「アラシトラ」の章は本作中でも物語が最も盛り上がる場面のひとつなので、この音楽は非常に高まりますね。ちなみにクリストフさん、自ら右腕に「嵐の踊子」のいかついショドーのタトゥーをされていて、そのときの様子もブログに詳細に書いています。スゴイ。タトゥーは作中でも大きな意味を持っています。

11-11-11 | Jay Kristoff - Literary Giant
https://jaykristoff.com/2011/11/29/11-11-11/

これも検索していて見つけた、クリストフ氏が2012年のインタビューで答えている創作観にとても共感したので、こちらも引用してみます。「あなたはハッピーエンドを信じていないというが、これは"Lotus War"三部作のエンディングを示唆しているの?」という質問に答えて曰く。

In my opinion, victory without sacrifice is meaningless. I want my readers to be afraid for the characters they love. There are no certainties in life. No guarantees everyone will live happily ever after. Good fiction is the same.
No-one is safe.

この作品観、良くないですか?私はこのリアリスティックな考えかた好きだし、この『ストームダンサー』(と続く"Kinslayer"と"Endsinger"からなるロータス戦記三部作)において、誰が死に、誰が生き残るかというのが鍵になるのかなという感じはします。とっても楽しみ。
下巻が発売されたら、また読んでレビューを書いてみたいと思います。

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