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フランチェスコ・トリスターノ「Piano Impossible!」

クラシック2012-06-23 04:08

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フランチェスコ・トリスターノ(Francesco Tristano)のピアノリサイタルに行ってきました。6月22日19時、銀座のヤマハホールにて。来日公演を観に行くのは2010年の白寿ホール、2011年の津田ホールに続いて3回目、UNITでのライブ・セットも含めると4回目なので、それなりに追っかけていることに。

というのも、やはり、バロック音楽~現代音楽~テクノを、表現のうえで同一線上で捉えていて、かつそれなりに評価されている人ってほとんどいないし。ましてや、自分とほぼ同年代(81年生まれ)で、テクノロジーに対する皮膚感覚をリアルタイムに共有しているとなると。たまに「貴公子イケメンピアニスト」みたいに浅く紹介されているのを見ると、違うんだ、もっと凄いことやっているのに...と思ってしまう。

ただ、はじめ今回の来日はスルーしていました。あーまた来るんだ、みたいな。実際、今年は既に2月にゴルトベルク変奏曲で来日していて、渋谷WWWでのクラブ・ギグもやっていて、結構ちょいちょい来ている印象だったので、あまりチェックしていなかった。
で、たまたま今日Twitterで公演があるのを知って、プログラムの内容を見て驚いた。ルチアーノ・ベリオや武満徹などの現代音楽、フレスコバルディやスカルラッティといったバロック音楽、そして自作を交えた、ピアノ&エレクトロニクス・セット!来日公演で、コンサートホールに電子楽器を持ち込むプログラムは初じゃないかな?ダメもとでチケットぴあで検索したら、当日にもかかわらず前売りが買えそうで、しかもかなりいい席だったため、急遽行くことに決めた。仕事が立て込んでいなくて絶好のタイミングでした。

さて、プログラム前半はアコースティックな曲から。ベリオの"Sequenza IV"は短い音が大きく左右に跳躍するアブストラクトなピアノ曲。一転して、17世紀のフレスコバルディのトッカータから7曲を続けて。このあたりは本当に澱みなく、過剰に感情を込めるでもなく淡々と弾きますね。

ルカ・フランチェスコーニの"Mambo"は、冒頭の断続的な叩く低音が、徐々に膨大な音の束になって激しく上下する力強い曲。この人はカールハインツ・シュトックハウゼンに師事し、ベリオの下でアシスタントをしていたこともあるそう。トリスターノはかなり影響を受けているらしく、彼の同名曲では、この曲の最後の左手の主題を転用しています。前半で、この曲だけは暗譜ではなく楽譜を見て弾いていて、弾き終わった譜面を横なり床に投げ散らかしていくのが印象的でした。

休憩のあいだに、ピアノの他いろいろと電子機材のセッティングが始まる。まず奥に黒いキーボード(シンセサイザー)。ピアノの上にMacとMIDIコン(MIDIコンはLaunchPadっぽくて、たぶんMacで走ってたのはAbleton)、それにラックマウントみたいな操作系が前面にある空間系エフェクター。2階席最前列の中央だったので、角度的には手元はバッチリ見えたんですが、遠くて細かい種類までは分かりませんでした。
ちなみに、20分ほどの休憩でしたが、さすがにセッティングは本人が出てきてやっていましたね。

後半は、前述のトリスターノ版"Mambo"から、同じく自作の"Nach Wasser noch Erde"。この流れは、アルバム『イディオシンクラシア』の冒頭と同じ。ハイハットの連続音から、ビートを交えて、いったん静かになってからミニマルなピアノのフレーズが多層的に展開する。所々でエフェクターでディレイを長くしたり、リバーブにピッチ変調をかけたり、あるいはロービットノイズを混ぜたりして、空間を作っていました。

続いてジャスティン・メッシーナ(Justin Messina)の"Radio hat music"。この人は80年生まれで、カール・クレイグやモーリッツ・フォン・オズワルドとのプロジェクトで一緒に活動している仲間のようです。SoundCloudにExcerpts from Radio Hatと題した曲が上がっていて、おそらくこのサンプルをバックに、即興的に音を足していくスタイルでした。ピアノだけでなくシンセパッドも積極的に混ぜていて、カットオフのつまみもぐりぐり回したりして、鮮やか。

そして、フレスコバルディのトッカータのメッシーナ・リミックスというのがまた凄い。これはプログラム解説のトリスターノ自身の言に曰く、

ジロラモ・フレスコバルディのトッカータ集の序文(Al lettore)には、「反復、省略、装飾、即興することは自由」と記載されている。これは後にピエール・ブーレーズの様な20世紀の作曲家が開拓したオープン・フォームを明示した最初の作品の一つである。また、音楽的素材を他の作曲家が自由に流用、編纂することは、おそらく「リミックス」という概念の最初の形の一つと考えられる。そして現代は紛れもなく「リミックス」の時代だ。

とのことで、オフィシャルにリミックスを許された400年前の楽曲なんだそうで。曲は、キックともベースともつかない、HPFにフィルターLFOのかかったボワン、ボワンという超低音のループをバックに、ピアノで細切れにフレーズを弾いては鍵盤から手を離し、エフェクトをかけるという繰り返し。ダンスミュージックとしても差し支えない、圧巻のパフォーマンスでした。最後はフェードアウトで余韻を残したまま、そこから流れるようにドメニコ・スカルラッティの鍵盤楽器ソナタを4曲。

有名なK.450は、こうして聴くとダンスミュージックそのものですね。快活なK.13、アルゲリッチの演奏で知られるK.141もテンポ良く上半身で踊りながら弾いていました。装飾音やテンポ・ルパートを多用した、派手めの弾きかたになっていたのはちょっと意外。バッハの鍵盤楽曲を弾くときとは明らかに変えているような感じでした。

K.32で少しテンションを落として、再び自作の"La Franciscana"。この曲は新作で、やはりミニマルなモチーフが単純なコード進行を反復していくうちに、連鎖的にエスカレートしていく彼らしい曲。以前、Aufgangの盟友ラーミ・カリーフェとのデュオで"Jeita"という曲を発表していますが(SoundCloud)、これも同じスタイルですね。ただ、これはピアノに重なるようなエフェクトのかかり具合が気持ち良くて、これだけはどこでオペレーションしているのか分かりませんでした。単にオケに合わせていたのか、裏で卓を触っている人がいたのか。かなりいい曲です。

アンコールは、これも『イディオシンクラシア』から"Eastern Market"でした。キックこそないものの、露骨にデトロイト・テクノを連想するシンセリードとの掛け合いがジャズっぽい。後半の展開はCDにはない激しいもので、面白かったです。

こうやって振り返ると、今回もかなり濃いコンサートでした。特に後半は全楽曲を続けて弾いていて、トリスターノについては何度も書いていますが、「DJ」そのものです。もっとコンサートホールとクラブを近づけてほしい。私もバロック音楽に関しては、300~400年前の先鋭的なダンス音楽として聴いています。

今回は突発的な判断でしたが、やはり行って良かったです。またいずれ、間を空けずに来日してくれそうですね。

フランチェスコ・トリスターノ ピアノ・リサイタル
~Piano Impossible!~

2012年6月22日(金)19:00@ヤマハホール

L.ベリオ/セクエンツァ 第4
G.フレスコバルディ/
トッカータ 第2集より 第4番、第9番、第8番
トッカータ 第1集より 第8番、第1番、第11番、第12番
L.フランチェスコーニ/マンボ
==
F.トリスターノ/マンボ※
F.トリスターノ/Nach Wasser noch Erde※
J.メッシーナ/Radio hat music (世界初演)※
武満 徹/フォー・アウェイ
G.フレスコバルディ(リミックス:J.メッシーナ)/トッカータ 第2集より 第8番※
D.スカルラッティ/
ソナタ ト短調 K.450
ソナタ ト長調 K.13
ソナタ ニ短調 K.141
ソナタ ニ短調 K.32
F.トリスターノ/La Franciscana (世界初演)※
==
F.トリスターノ/Eastern Market※

※ピアノ&エレクトロニクス使用曲
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