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オランダ・バッハ教会のマタイ受難曲

クラシック2015-04-03 18:09

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All of Bachという、J.S.バッハの残した全作品の演奏動画を、20年がかりで毎週金曜日ごとにオンラインでアーカイブしてゆく壮大な企画が進行中であることは、以前にも記事にした通りなのですが(オランダ・バッハ協会の「All of Bach」 | EPX studio blog)、本日4月3日、2015年の聖金曜日に合わせて「マタイ受難曲 BWV244」が公開されました。もちろん全68曲、演奏時間にして2時間45分のフル・バージョンです。

St Matthew Passion - All of Bach
http://allofbach.com/en/bwv/bwv-244/

演奏自体は2014年にオランダのナールデンで収録されたもののようで、オランダ・バッハ協会(Nederlandse Bachvereniging)は、かの地で90余年にわたってマタイを演奏し続けているのだそう。さっそく通して観てみました。おそらくYouTubeなどでイリーガルにアップされているものも含めて、インターネットにアーカイブされている同曲の全曲演奏の映像としては、最も美しいもののひとつなのではないかと思います。

YouTubeでは、メイキングとして、同団体がナールデンでマタイを演奏する意義について、また楽曲自体の魅力についてそれぞれに語る、15分のショートドキュメンタリーもアップされています。

私はまだ全然、この曲をちゃんと聴き始めたのは去年からなのですが、上の動画でも語られている通り、宗教や国籍を超えたユニヴァーサルな魅力を感じています。それはなんかこう、私がまったくキリスト者でないからなのかもしれないけど、必ずしもシリアスな意味だけではなくて、単純にミックスされた音楽の集合体として気持ちいいんですよね。この楽しさをクラブミュージック畑のひとに分かりやすく説明するならば、「DJミックス」そのものだと思うのです。

我々が宗教曲というと、もっとお経のような単調でストイックな音楽をイメージしてしまいがちなのですが、マタイ(に限らずバッハのカンタータ全般)を聴くと、ダンスミュージックのようなきびきびとした拍節感があって、明るい曲もあったりして。で、アリア、コラール、レチタティーヴォというバラバラの種類のヴォーカル曲が、完璧にキーが合うように滑らかに繋がっていて、時には前の曲の雰囲気を引き継いで、またある時には意図的にドラマティックなブレイクがあってというように。バッハはさしずめ、自作曲だけでミックスするDJですね。

もちろんそれだけが魅力じゃないんだけど、もっとこう、アカデミックな接しかただけではなくて、現代のダンスミュージックと地続きの音楽として、親しみを持って受け入れられる素地がこの曲にはあるような気がしています。

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そういえば、先日NHK-FMで「おぎやはぎのクラシック放談 マタイ受難曲」という番組を放送していました。バッハ研究者の磯山雅先生が、2時間かけて同曲の魅力をおぎやはぎの2人と光浦さんに噛み砕いて説明するという挑戦的な番組で、なかなか面白かったです。実際にいろんな演奏を聴き比べながら、副音声的に解説が入るみたいな試みも。でも、さすがに尺が足りない感じはあって、もう少し概説的なところから順を追って伝えてほしい感じはありました。

gerubach氏のYouTubeチャンネルでも、受難週に合わせてなのか、3月31日に新たにマタイが公開されていました。この方は、以前から主にバッハ関連の譜面スクロール動画(…という一般的な呼びかたがあるのか分からないけれども、要は楽譜に慣れていない人にも分かりやすいように、音楽に合わせて楽譜をスクロール表示する動画)を作成しては、精力的にアップしている方で、これまでも数々の大曲にチャレンジしていますが、マタイは遂に来たかという感じで。

観ていただければ分かると思いますが、楽曲ごとに全パート譜を網羅しているばかりか、英語の対訳も付いているというものすごく凝った編集になっていて、その労力たるや。ちなみに動画の最後に注釈がある通り、音源は89年のレオンハルト盤のようです。

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記事中の写真は、以前取り上げた蘆野ゆり子さんによるカリグラフィー作品(蘆野ゆり子 カリグラフィー作品展 | EPX studio blog)より。この上の写真の部分は、殺人者バラバを開放し、代わりにイエスを十字架につけろと民衆が叫ぶ一節で、マタイでは最もドラマティックな場面のひとつです。

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