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「ファイブリア」シリーズを読み返す

日記2014-10-31 01:04

先日、友野詳さんの小説『ルナル・サーガ』と『コクーン・ワールド』(ともに角川スニーカー文庫)の新装版が間もなく発売になるというのを知りました。しかも両作品とも、初のオーディオドラマCD化の企画もあるとかで、まさかの朗報!あれですね、30代になると、中高生のころに憧れた作品が意外な形で帰って来てくれるケースが増えるもので、それというのも同世代の読者が出版社なりなんなりの企画側に回るからなんでしょうね(去年の『グルグル』展とかも)。いやー30代楽しすぎる。大人になって良かった。

[スニーカー文庫が誇る、友野 詳2大ファンタジーが復活!!]
http://www.sneakerbunko.jp/special/cocoon-runal/index.php

いわゆるライトノベルのはしりとも言えるこの時代の作品、つまり、90年代前半以降に出た少年向けファンタジー小説からは、他のマンガやゲーム作品と並んで多くの影響を受けました。私は当時中学生。きっかけは、やはり多くの同世代が経験しているであろう『ロードス島戦記』で、同じ水野良さんの『クリスタニア』にハマりつつ、並行して友野さんの『ティルト・ワールド』、そこからシリーズを遡って『コクーン』、そして『ルナル』と読んでいったのを覚えています。

特に、『コクーン』『ティルト』『アビス』各3巻に加えて総集編1巻の計10巻からなる「ファイブリア」(冒険者)シリーズが大好きでした。というか新装版の発売を待つまでもなく、部屋の押し入れに全巻揃っていて、すごく読み返したくなってしまったので、本当に10何年かぶりに通して読みました。そしたらやっぱり面白かった。あーあったこれこのシーン!みたいにして、埋められたタイムカプセルを順に開いていくような感じでした。

ファイブリアシリーズの特徴は、コメディータッチのくだけた文体で、何でもアリの剣と魔法のファンタジー世界での多彩なキャラクターによる活劇を、冒険小説として描いていることです。TRPGが下敷きになっているとあって、基本は『ロードス島』などを含む同じグループSNEによるソード・ワールドのパロディによって構成されています。舞台となる世界がフォーセリア→ファイブリアだとか、アレクラスト大陸→アレクファースト大陸だとか、そういう小ネタが無数に。でいて、古いマンガとかアニメのパロもたくさんあったりで、中学生当時は分からなかったネタに今気づいたりというのも。

しかし何と言っても魅力なのは、幅の広いキャラクター描写なのです。本作は、決まった主人公のない群像劇で、出番の多い少ないの差はあれど、最終的には総勢16人1組のキャラクター+αが登場します。しかもそれぞれがまったく違う方向に強烈な個性を持っている。彼らはそれぞれに別々の冒険をして、最終巻でついに一同に会するのですが、そこで組み合わせがシャッフルされてもいっこうに破綻がなく、みんなが活き活きとしている。
イラストレーターの弘司さんによる表紙と口絵がまた良くて、ふわっとしたやわらかいタッチで鋭くキャラの特徴を掴んでいて、ちょっとした仕草や表情で、見事に描き分けられているんですよね。

ファイブリアシリーズは、各3巻からなる独立した3部作と、最終巻となる『かくも偉大な冒険者』からなり、1992年から97年にわたって刊行されました。せっかく全部読み返したので、簡単に各巻の感想などを書いておこうと思います。

コクーン・ワールド

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地上を旅する6人の冒険者が、あるきっかけで未知の地底世界に引きずり込まれてしまい、地上への出口を求めて旅するというお話。地底で出会った人々との数奇な因縁によって、最終的に6人はそれぞれに地上へ戻るか戻らないかの決断を迫られるわけですが、そこはそれ、シリアスになりすぎず、あっけらかんと描かれます。そこにかえって不思議な余韻があったり。ラストに示される、この物語全体の語り手の正体というのが、またひと仕掛けあって面白いんだ。

今回出る新装版も、やはりこの『コクーン』からのスタートで、第1巻にあたる『黄昏に踊る冒険者』が11月1日、以下(売れ行き次第で?)続刊ということのようです。

ティルト・ワールド

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あることを理由に「傾いて」しまった世界を元に戻すため、組み合わせも新たな6人の冒険者たちが奮闘するというお話。傾いてというのは物理的に一方にナナメってしまったという意味で、いずれ明かされるその理由というのも、ちょっとおかしな方向に振り切れたもので笑えます。
と思いきや、2巻のラストではまさかという驚きのシリアス展開もあって、そこからは予想を超えたスケールの大オチに向かって突き進んで行く。『コクーン』から続けて出ている、草原妖精のピコという大人子供のようなキャラがいて、こいつが物語を徹底的に引っ掻き回すわけですが、それがそこに繋がるんだみたいな伏線回収もあったりで。一方で、ふざけてばかりのピコが作中で2回だけ見せる本気のシーンの印象深さといったら。

そうそう、『ティルト』の特徴として「語り」の主観が章ごとに違い、さまざまな登場人物の一人称視点として綴られるという点があります。それが人だけではなくて、使い魔のカラスだったり、ペットのネズミだったりするのが面白くて、それらを通してキャラの関係性が立体的に示されるのです。

アビス・ワールド

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『コクーン』で地底世界に残った数人と、その子供たちなど新しいキャラを加えた6人による冒険。地底の底に空いた大穴へ飛び込むと、そこは8つに分かれた魔界で、あることを理由に暗黒の神々が争っていたというお話です。夫婦、親子など家族をモチーフにしたシーンはシリーズ中何度も出てくるけれど、この『アビス』では、ナルとルチルの兄妹を中心として、そのテーマが色濃く表れている(もちろん、細かいギャグを散りばめつつ)。
3巻ではコミケをネタにした「八層地獄」という世界が出てきます。これ、読んだ当時は同人誌即売会の世界をまったく知らなかったので分からなかったけど、今読むといちいち小ネタが笑える。あと本作では、シリーズを通して相当にアクの強いキャラ、タリアの無茶苦茶さが際立っていて、しかも最後に意外な形で理由づけされていて楽しいです。

そして、全3部の最終作『かくも偉大な冒険者』。シリーズファン向けのカーテンコールにしてはボリュームありすぎるでしょという内容で、今までのキャラ同士による真新しい掛け合いがひたすら面白い。筋書きとしても、何でもありの世界とはいえそこまでやるかというはっちゃけかたで、どう収集つけるのかと思いきや、最後の最後のたった1文で、ものすごく納得できるオチがつく。鮮やか!

ファイブリアシリーズについては、以前も著者の友野詳さん自らTwitterで昔語りをされていたりとか、今回の新装版にあたってもインタビューに答えられていたりしています。新装版にドラマCD、楽しみですね。

友野詳さんが語るコクーンワールドの思い出話 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/455909
Group SNE | ユーザーコンテンツ | 著者インタビュー
http://www.groupsne.co.jp/user/interview/2014/10/01.html

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