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Slick Shoota

テクノ2014-05-21 22:21

去年Strayにハマって以来、ドラムンベースとフットワーク(ジューク)のクロスオーバーが気になっているのですが、先日こんな記事を見つけまして。時間を作ってじっくり読んでみたら、ものすごく面白かった。

Autonomic, jungle footwork and slow/fast: how drum’n’bass got its groove back ? FACT Magazine: Music News, New Music.
http://www.factmag.com/2013/08/28/autonomic-jungle-footwork-and-slowfast-how-drum-n-bass-got-its-groove-back/

2013年8月の記事。Exit Recordsを主宰するdBridgeがかつて提唱した、Autonomicというジャンル(170bpmの「半分」にあたる85bpm付近のグルーヴに重きを置いたドラムンベース)と、それに近い160/80bpmに軸足を置くフットワークとの歴史的な…といってもここ数年の話だけど、の関わりについての概説、更には周辺アーティストの紹介的な内容でした。ここに出てくる名前というのは、私のなかではバラバラに認識していたのだけど、それがひとつの文脈のなかで繋がったような感じ。音源の具体例もあって分かりやすかった。なるほどこんなことになっているのかと。

特に160/80ないし170/85という考えかたは私にとっては新鮮で、つまり、半分をとるのはダブステップが散々やり尽くしたけれど、それはもっと遅いbpm(140/70とか)での話で、私はずっとドラムンは170+と思い込んでいた。しかも、ここで出てくるbpmの2重レイヤー構造は、ハード系とディープ系の住み分けのような感じではなくて、もっと柔軟で、互いに溶け合っているようなイメージなんですね。

Exit Recordsはそうした実験の急先鋒で、それはDub PhizixとかClarityの作品で知ってはいたのだけど、今年の4月にDJ RashadとDJ Spinnの共作が出て(DJ Rashad, DJ Spinn, Alix Perez - Make It Worth (Original Mix) [Exit Records] :: Beatport)いよいよ越境も大胆になってきたんだなぁ…と思っていた矢先のRashadの訃報。

私はなんというか、フットワークに関してはまったくの門外漢で、それどころか2年前までの時点では、あまり同調的ではなかったのです。そのころにもブログに書いたことがあるけれど、「○○ネタのジューク」みたいなのの流行がまったく面白いと思えなくて。確かにあのグルーヴを発見したことは革命的だけど、真似して同じことを繰り返しても、それは単に消費だしなぁという。たとえハウスミュージックの輝かしいサンプリング文化が前提にあったとしてもですよ。

で今とかも思うのは、シカゴのイノベーターたちの音マネをするのではなくて、むしろそのエッセンスを飲み込んで自分なりに消化できているアーティストがいれば、そのほうがかっこいい。考えてみれば、かつてのデトロイトテクノなんかもそうで、初期のケンイシイはあっちの人と同じことをやって評価されたわけじゃないもんね。結果としてその人のフィルターを通してしまったら、かえって個性とかオリジナリティが色濃く出てしまうというのが、聴くにしても作るにしても理想です。

ところで、前述のStrayのミックス(Stray - FABRICLIVE Promo Mix (Jan 2014) by straydnb on SoundCloud)を聴いていたらその意味で気になる曲があって、それがSlick Shootaだったのでした。ここからが本題。

なんだこりゃって感じで、本人のSoundCloudを覗いてみたら全部こういうので。要するにビートのエッセンスとしては完全にフットワークなんだけど、もっと普通のクラブミュージック的に分かりやすくて(つまりダンスバトルで技を競うという感じではなく)、なんか音選びも硬いしテクノっぽい。気になって色々聴いていくと、ちょうど昨日20日に6曲入りEPが発売されたとかで、これがまたカッコ良くて、しかもリミキサーがまさに上のFACTの特集記事で出てきたOm UnitとAdisson Grooveという。

Slick Shootaはノルウェー(!)のアーティストだそうで、2012年ごろからあちこちのレーベルへ曲を提供しているようです。すごく気に入ったので本人のDJミックスを聴いてみると、ほとんど自分の曲と自作のリミックスばかりで、そこから先に広がらない感じがまた。これとかメチャクチャ良くて、最近家でも外でも延々と聴いています。

検索して出てきたインタビュー記事を斜め読みしてみると、この人のスタンスにすごく共感できるのです。例えばこれとか。

The thing that attracted me the most with juke and footwork though is that there aren’t any given rules, you just get on a vibe and finish a track. It doesn’t have to be super polished - it’s all about good ideas and being creative, not about having the loudest tracks.
http://hyponik.com/features/slick-shoota-satta-mixtape/

また、このあたりとか。

I hope people are thinking the same as me though with juke and footwork - be inspired, but also be original. It feels good to just try new stuff out, weird percussion or beat patterns, vocal chops etc. Not being locked into a certain sound or style, just have fun and see what comes out of it. That’s what grabbed me anyway.
http://hyponik.com/features/slick-shoota-satta-mixtape/

ひととおり公開されている曲と、また上記のようなインタビューを俯瞰して漠然と思うのは、ノルウェーのトロンハイムという地方都市で、古いマシンと古いDAW(Cubase SX3を8年使っているとか)でしこしこ作ってて"こじらせて"ないわけがないよなあと。どうも最近、過去の曲をYouTubeにもアップし始めたようで、こんなのとかも。

もしかしたら、メインストリームのジュークが好きで聴いている人にとっては邪道なのかもしれないけれど、私はこの方向性にすごく興味があります。少しピッチを上げてドラムンベースとうまくミックスしても、おもしろくなるんじゃないかなと。

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