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『The Martian(火星の人/オデッセイ)』

日記2016-02-29 23:21

公開されてからわりとすぐ観に行きまして、とっても感銘を受けてkindle版の原作小説を読み、そのうえでこの前2回目を観に行きました。ハマりました。

わりと映画に詳しいファンが多いニンジャスレイヤー関連のアカウントで話題になっているのを見て、初回はizさんフミアキさんここうさんと立川シネマシティで3D版を。観る前の懸念としては、まあお話の大筋は限られているじゃないですか。"Gravity"のときと同じで、要は助かるにしても助からないにしても孤軍奮闘というシチュエーションなので、それを2時間強の映画として面白く見せるかというのは、いかにも難しそうだなと思っていました。でも結果として、最後までなんかずっと楽しめた。

というかね、これは理系というかロジカルな思考が見についている人にとってはたまらない作品で、パワーとエモーションで一発逆転とかではなくて、冷静にひとつひとつ問題解決にあたり、その結果として成功に導くという一見するとものすごく地味な筋書きなんですよね。その助けになるものとして、「ユーモア」や「音楽」というような要素が肯定的に描かれていて、全体として妙にハッピーな雰囲気の作品になっている。

映画のなかでは、どうしてそうなるのかというような細かい説明を省いていたこともあり、これは語られていないところにこそ科学の面白さが詰まっているのではないかと思い、原作小説を読んでみたら案の定でした。小説版、映画以上にすごく面白いです。文庫本に換算して600ページ以上というボリュームながら、特に長いと感じることもなく一週間くらいで一気に読んでしまった。

まず、読んでいる感覚がブログみたいだったのです。ほとんどの部分が、ワトニーによるログの描き起こしという形態で、フレンドリーな一人称の口語体として表現されていて、読みやすかった。ひとりのエンジニアとして、悩んで、考えて、試して、時には失敗したりもしながら、成功したらまた次の課題に挑戦するという様子が、なんだか仕事のできる先輩か同僚の業務日報を覗き見ているような感じで。

考えてみると、これって宇宙飛行士だからとかではなく、一般のエンジニアが思い描く理想の仕事環境だなあと。自らの腕と実力で課題に取り組み、事情を知らない上のほう(NASA)からあれこれ指示されても現場の裁量と判断であっと言わせ、好きな時に仕事して好きな時に休み…最後には大きな目標を達成して世界中から祝福されるという。優しい世界。小説版ではこのあたりがとても真に迫ったものとして描かれていて、作者がコンピュータープログラマーだったというのも納得できる。

また、小説版ではローバーで何日も旅をする風景が印象的でした。とりあえずは安全な設計になっているハブを遠く離れ、命をローバーに預けて身一つで旅をする心細さ。映画でも、最後のMAVまでの旅程はファンタジー映画のように美しい映像(マッドマックスの沼地のシーンような、あるいはネバーエンディングストーリーのような)が続きましたが、小説版はあれに輪をかけたウルトラハードモードになっているのでした。2つくらい、大きな事件がカットされている…。

とはいえ、あの小説を映像化したものとしては、この映画はほとんど完璧な作品で、余計な要素を足すことなく忠実に再現していると思いました。映画でカットされているパートがいくつかある一方で、小説では、例えばローバーやMAVの外見、あるいは実験機器などについてビジュアル的に描写されることは少ないので、両者はいい補完関係になっています。

サスペンスや駆け引きはないし、大きなプロット・ツイストもない、手に汗握るような一大アクションシーンもないという不思議な映画ですが、私はこれ大好きです。BDソフト化されたら買いたいな。

『ザ・ウォーク』

日記2016-02-12 16:09

3Dで映画『ザ・ウォーク』を観てきました。実在人物で現在もご存命の曲芸師、フィリップ・プティによるワールド・トレード・センタービル屋上での綱渡り事件を題材にした映画。おもしろかった。

以前、ドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』を観て、このエピソードにはいたく感激したものです。なにしろ、命を懸けたこんな無謀な挑戦に意味はないことをあっさりと認めたうえで、「だから」やるという狂気は、芸術家の態度そのものだと思ったから。発案から実行までの思い切りの良さや独創性、美しさ、さらにはもはや誰にも再現不可能という意味でも唯一無二の試みだったわけです。

『マン・オン・ワイヤー』は、その狂気に第三者的な視点から迫る作品だったけれど、『ザ・ウォーク』は常にプティの視点、もっと言えばTPS的な視点から追体験することを主眼とする作品でした。まず前提として、本作は大画面で3D映画として観ないと意味ないです。『ジュラシック・ワールド』とか以上に、いい意味で「アトラクション」でした。

ただ、映画としてどうかというと、ちょっと期待していたものと違ったな。初めに危惧していたのが、そもそもこの逸話自体がとてもウソっぽいというか、にわかに信じがたい成功譚ではあるので、普通にフィクションとしてドラマ化してしまうとそのままウソっぽくなってしまうのではないかということ。変な話、たいした挫折も経験することなく、次々に協力者に出会って次々にコトが上手く運んで、さらっと成功させてしまうのです。その意味では、観ている最中は特に違和感を感じさせることなく画面にすっと入っていけるので、脚本や役者さんの演技が上手いのだなあと思いました。

形式として、冒頭からプティ役の主人公の回想に基づくモノローグと並行して展開するので、思ったこと感じたことを全部洗いざらいナレーションで喋っちゃうんですね。そこは、想像させる余地を残してほしかった…。

実在人物を元にした再現ドラマという意味では『アメリカン・スナイパー』とかも近いと思うんだけど、史実に敬意を払い、極端な誇張や改変は行わないようにしようという誠実なスタンスは見て取れる。それでもやはり、完全なノンフィクションと比較すると重みがなく、軽い印象になってしまうというか。そこを超えてくるものが見たかった。

良かったのは、ツインタワーという象徴的なモニュメントに対して、押しつけがましいメッセージや政治的な思想を重ねてこなかったところですね(長いラストカットで何らかの暗示はしていたにせよ)。プティの犯罪は、ひとりの芸術家がやりたいと思ったからやった、ということ以上でも以下でもないことで、それゆえに美しいことなので、そこに後付けの意味を持たせようとしなかった点は強く支持できます。

それにしても、ずっとそこにあって、今まさに撮ってきたようなツインタワーのさりげない現実感に、VFXのすごさを改めて感じたり。いかにもCGっぽいところは、意図してそういう演出にしているわけで、そうではないところもほぼすべてCGだったんだなあと思うと。3Dで観ておいてよかったなとこれほど高いレベルで感じた作品は、本作が初めてかもしれません。

これに先立って『オデッセイ(The Martian)』も3Dで観たのですが、それについては、いま原作小説を読んでいるところなので、読み終わったらまたなにか書きます。

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