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『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』先行上映会

日記2015-04-16 22:00

11日土曜日、池袋P'PARCO「ニコニコ本社」での『ニンジャスレイヤー』のアニメの特別先行上映会へ行ってきました。以下、この記事はその翌日の12日に直後の感想を書きとめたものになりますが、ネタバレを避ける意味で、16日の配信開始後に公開とします。

ところで、上映会に先立って、渋谷タワーレコード3Fで「1/1スケール稼働式ニンジャスレイヤー人間」による忍殺メンポ配布会へも行ってきました。コミケだとかアキバならともかく、まだアニメも始まっていない渋谷タワレコで、どんなふうにプロモーションするのか興味があったので。
時間になると、スタッフの方とともにニンジャスレイヤー人間さんが来て、非売品のメンポ(要はマスクですね)を配っていました。お客さんは案の定まだちらほらという感じで、写真を撮っているかたも何人か。私もせっかくの機会なので、一緒に写真を撮ってもらいました。目つきが鋭く、ポーズも決まっていて、研修の進み具合を感じた。ニンジャスレイヤーはこれから世界的なムーブメントになっていくので、これは実際なかなかない機会ですよ。

さて池袋へ移動後、時間になってP'PARCOの前へ行くと、すでに公園側に待機列がずらりと。幸運にも整理番号が前のほうだったので、列の中へ入れてもらいました。
そう、今回チケットに関してはひと苦労あって、一度は発売日の発売直後に速攻で売り切れてしまい、完全に諦めていたんですよね。その後、何故だかローソンチケットで復活しているという情報があり、そのタイミングで予約購入できたのです。発売日、転売の報告がいくつか上がっていたので、もしかするとそれらの違反キャンセル分が回ってきたのかも…って、知る由もありませんが。なんにせよラッキーでした。

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19時から、イベントスタート。最初の1時間はニコ生でも中継があったとおり、キャスト5人によるトークでした。テンポのいい進行と、スキャッター役の水島さんの芸人さんばりの立ち回りで、すごく盛り上がった。
またその中で、アニメのフォーマットについてもいろいろと新しい発表があり、各話15分で全26話2クールの作品であること、6月からBD/DVDが順次リリースされることなどが明らかになりました。

そして…いよいよ本編が公開されたのですが、ここからはどう書いてもネタバレになるので、未見で興味がおありの方は、先にニコニコの公式チャンネルかなにかで、まず1話を観ていただくのがいいかと思います。ていうか観てください。

視聴した感想

衝撃でした。あの力の入ったOPから数秒、全身から力が抜けていくのを感じた。エッ…これあの…マジで…って感じ。あのときの会場のお客さんの一体感すごくて、ざーっと波が引いていくというか、あんなに脱力感に包まれたことなかった。でそのあと、いやーこれはトリガーやってくれたと。

始めに言っておくと、私はトリガーの作った『インフェルノコップ』が大好きです。しかも、初めてこの作品を観たとき、これは系統としては完全にニンジャスレイヤーだと思ったんですね。なので去年の4月2日にアニメ化が発表されたときも、反射的にこんなことをツイートしていたのでした(このことは、ログを検索する今の今まですっかり忘れていたけれど)。

でもまさか、この要素を一切伏せた、あの感じの事前のプロモーションで、まんまインフェルノコップ(の表現手法)が来ると思わないじゃないですか。だって「あのキルラキル、LWAのトリガー」と銘打って、雨宮監督なんかはインタビューで「キルラキルを超えた」と豪語していて、でいてあのグリッグリ動くカラテアクション満載のPVでですよ。今にして思えば、これらがすべて全力の「フリ」だったんだなあというのが、もう。もう!

私がこの記事に関して、初見の方にはネタバレを避けてほしいと思ったのは、ひとえにこのショックを同様に味わってほしかったからなのです。というのも、このショックは私たちが原作小説のニンジャスレイヤーで「イヤーッ!」「グワーッ」「アイエエエ」に出会ったあのときと同種のものであり、ひいては、作中で一般市民がニンジャに出会ったときのNRS(ニンジャリアリティ・ショック)ともまた、メタ的な類似構造になっていると思うからです。まったく想定していない状況で、異質な価値観に出会った時の衝撃。

で、上映会での、そのあとの自分を含めたお客さんのリアクションですが…それが、爆笑だったのです。脱力からの爆笑。このアニメはこういう楽しみかたなんだ、というのが分かった後は、ただただ笑いました。休むヒマがほとんどないくらい笑った。

誤解のないように伝えるのが難しいんだけど、原作小説の『ニンジャスレイヤー』は、決してコメディー作品ではありません。もちろん、取っ掛かりとしておかしな日本語だとか、突飛なやり取りという要素はあるんだけど、過去の同作品のレビュー記事(『ニンジャスレイヤー』にハマる | EPX studio blog)でも書いた通り、基本はめちゃくちゃシリアスなサイバーパンクSF小説で、本気で心に迫ったり泣けたりする要素もたくさんある、神話的スケールの連作なのです。そこは改めて強調しておきたい。徹頭徹尾シリアスで緻密に編まれたお話です。

そのうえで、「アニメイシヨン」では(少なくとも今回の先行上映会で公開された1話と2話については)、敢えて完全に"笑い"に振り切っていたのです。せっかくの待望のアニメ化の機会にしては、あまりにも潔く、逆に心配になるほどの、思い切った振り切りかたでした。

思えば、今までは一般に小説やマンガが原作のアニメ化というと、言いかたは悪いけれども、アニメ化が「上がり」みたいな消費のされかたが多い印象でした。意図的にしろそうでないにしろ、映像作品が決定版とでも言わんばかりの。だけど、本作に関しては、おそらくそれはまったく当たらなくて、原作小説は至上のものであり続けるし、それ以外のメディアの作品は多様性の在りようを示したものとして扱われる。なんというか、他の何を犠牲にしてでもそのように導きたいという、決断的な意図を感じました。これは折に触れて翻訳チーム自身が繰り返しアナウンスしてきたことなので、言行一致には違いありません。

これは確実に賛否両論。もしかすると、正統的なアニメ(というのも定義がよく分からないけれど)のファンや、それを期待していた原作ファンからは、辛辣な評価を受けたり愛想を尽かされるかもしれない。いや、正直なところ、私も最初の脱力のなかには「がっかり」も多分に含まれていたことは認めます。残念ながら落胆してしまう人たちの気持ちはすごく分かる。
例えばこれが、原作の重厚さを引き継いだ、全編が超絶作画で描かれたアニメ作品だったら、原作を読まない人にもニンジャスレイヤーの魅力を余すことなく伝えることができたかもしれない、と。『キルラキル』や、その他名作と謳われるアニメ作品を正攻法で凌駕する作品だったらと。でもそうはならなかった。というか、原作者や翻訳チームが明確にそれを是としなかった。

しかし、それでもなお私が手放しでトリガーを絶賛したいのは、この作品を決して未完成なものでも、ニンジャスレイヤーではない別の何かでもなくて、「この表現形態(アートフォーム)において完成された」「余計なものを足しても引いてもいないニンジャスレイヤーそのもの」のアニメーション作品として実現してくれたことです。

実際、このお話の密度は相当なもので、1話にあたる「ボーン・イン・レッド・ブラック」は内容の同じオーディオドラマ版の38分、また2話の「マシン・オブ・ヴェンジェンス」はコミックス1巻丸ごと、これらを、OP/EDを除いて13分程度?のアニメに圧縮しているわけです。ほぼ、全部の要素を詰め込んで!特にヴェンジェンスの圧縮感は、原作なり田畑/余湖先生版のコミックスを読んでいると、尚更信じられないと思います。

そして、この表現形態についてひとつ思い至ったこととして、去年6月の有志によるニンジャスレイヤーオンリー即売会「ニンジャ万博」でのイベントスペースでの出しもの、野良修さんと無限軌道オニギリさんによる「ニンジャ紙芝居」、これがまさに今回の「アニメイシヨン」のエッセンスを、ずっと早く先取りしていたことに気が付きました。絵を行ったり来たりさせての「イヤーッ!」「グワーッ!」のミニマルな面白さ、それを受けての会場の異様な盛り上がりは、あの時のあれとまったく同じ!

「ニンジャ万博」に行ってきた | EPX studio blog
http://www.epxstudio.com/blog/2014/0616_ninpaku.html

もしかすると、このハイブリッド紙芝居的な表現形態は、ニンジャスレイヤーコンテンツの面白さを端的に表現するには、最も適したアイデアなのかもしれない…と本気で思い始めています。「レイジ・アゲンスト・トーフ」はぜひアニメでもやってほしいですね。

さて、笑いに包まれた1話2話の連続上映を終えて、会場は大喝采でした。これはすごいものが来てしまったぞというのと、すごい瞬間に立ち会ってしまったという実感とともに。最後は、再び登場してくれたニンジャスレイヤー人間=サンの撮影会。

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そういうわけで、これ、世間的にはどのように受け取られるんでしょうね。すごく楽しみだし、評価が割れるだろうなということを除いては、まったく予測できません。
だけどいずれにしても、自分のようなファンにとって嬉しいのは、楽しみかたが更にひとつ増えたということと、にもかかわらず原作の翻訳は従来同様に続いていくし、今後もどこへ取り去られたりも貶められたりもしないということ。これに尽きます。

あと、公式コンテンツでここまで無茶苦茶にやってくれたということは、二次創作はもっと踏み込まなくてはいけない。今まさに二次創作に取り組んでいる私なんかは、むしろ強力に背中を押されたような気がしています。何かを新しく始めるときに、周りの様子を伺ったり日和っているようではダメなんだ。

今後「アニメイシヨン」に関して、楽しみでもあり、また怖くもあるのは、シリアス寄りのエピソードをどのように表現するかですね。ヤモト・コキにまつわるエピソード、特に「スワン・ソング~」をもし取り上げるのであれば、お笑い全振りで茶化すような感じにはしてほしくないし…とはいえ、それで別の魅力を引き出すようなものが出来るのであれば観てみたいし、みたいな。

私はこれ、意表こそ突かれましたが全面的に支持します。来週以降がすごく楽しみになってきました。

『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』公式サイト|NINJA SLAYER FROM ANIMATION
http://www.ninjaslayer-animation.com/

オランダ・バッハ教会のマタイ受難曲

クラシック2015-04-03 18:09

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All of Bachという、J.S.バッハの残した全作品の演奏動画を、20年がかりで毎週金曜日ごとにオンラインでアーカイブしてゆく壮大な企画が進行中であることは、以前にも記事にした通りなのですが(オランダ・バッハ協会の「All of Bach」 | EPX studio blog)、本日4月3日、2015年の聖金曜日に合わせて「マタイ受難曲 BWV244」が公開されました。もちろん全68曲、演奏時間にして2時間45分のフル・バージョンです。

St Matthew Passion - All of Bach
http://allofbach.com/en/bwv/bwv-244/

演奏自体は2014年にオランダのナールデンで収録されたもののようで、オランダ・バッハ協会(Nederlandse Bachvereniging)は、かの地で90余年にわたってマタイを演奏し続けているのだそう。さっそく通して観てみました。おそらくYouTubeなどでイリーガルにアップされているものも含めて、インターネットにアーカイブされている同曲の全曲演奏の映像としては、最も美しいもののひとつなのではないかと思います。

YouTubeでは、メイキングとして、同団体がナールデンでマタイを演奏する意義について、また楽曲自体の魅力についてそれぞれに語る、15分のショートドキュメンタリーもアップされています。

私はまだ全然、この曲をちゃんと聴き始めたのは去年からなのですが、上の動画でも語られている通り、宗教や国籍を超えたユニヴァーサルな魅力を感じています。それはなんかこう、私がまったくキリスト者でないからなのかもしれないけど、必ずしもシリアスな意味だけではなくて、単純にミックスされた音楽の集合体として気持ちいいんですよね。この楽しさをクラブミュージック畑のひとに分かりやすく説明するならば、「DJミックス」そのものだと思うのです。

我々が宗教曲というと、もっとお経のような単調でストイックな音楽をイメージしてしまいがちなのですが、マタイ(に限らずバッハのカンタータ全般)を聴くと、ダンスミュージックのようなきびきびとした拍節感があって、明るい曲もあったりして。で、アリア、コラール、レチタティーヴォというバラバラの種類のヴォーカル曲が、完璧にキーが合うように滑らかに繋がっていて、時には前の曲の雰囲気を引き継いで、またある時には意図的にドラマティックなブレイクがあってというように。バッハはさしずめ、自作曲だけでミックスするDJですね。

もちろんそれだけが魅力じゃないんだけど、もっとこう、アカデミックな接しかただけではなくて、現代のダンスミュージックと地続きの音楽として、親しみを持って受け入れられる素地がこの曲にはあるような気がしています。

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そういえば、先日NHK-FMで「おぎやはぎのクラシック放談 マタイ受難曲」という番組を放送していました。バッハ研究者の磯山雅先生が、2時間かけて同曲の魅力をおぎやはぎの2人と光浦さんに噛み砕いて説明するという挑戦的な番組で、なかなか面白かったです。実際にいろんな演奏を聴き比べながら、副音声的に解説が入るみたいな試みも。でも、さすがに尺が足りない感じはあって、もう少し概説的なところから順を追って伝えてほしい感じはありました。

gerubach氏のYouTubeチャンネルでも、受難週に合わせてなのか、3月31日に新たにマタイが公開されていました。この方は、以前から主にバッハ関連の譜面スクロール動画(…という一般的な呼びかたがあるのか分からないけれども、要は楽譜に慣れていない人にも分かりやすいように、音楽に合わせて楽譜をスクロール表示する動画)を作成しては、精力的にアップしている方で、これまでも数々の大曲にチャレンジしていますが、マタイは遂に来たかという感じで。

観ていただければ分かると思いますが、楽曲ごとに全パート譜を網羅しているばかりか、英語の対訳も付いているというものすごく凝った編集になっていて、その労力たるや。ちなみに動画の最後に注釈がある通り、音源は89年のレオンハルト盤のようです。

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記事中の写真は、以前取り上げた蘆野ゆり子さんによるカリグラフィー作品(蘆野ゆり子 カリグラフィー作品展 | EPX studio blog)より。この上の写真の部分は、殺人者バラバを開放し、代わりにイエスを十字架につけろと民衆が叫ぶ一節で、マタイでは最もドラマティックな場面のひとつです。

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