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Veta with Stanislav Tolkachev

テクノ2014-06-25 01:08

スタニスラフ・トルカチェフのことを知ったのはいつだったか。初めてBeatportで曲を買ったのは一昨年の暮れくらいで、近年のテクノにしては珍しいくらい速いbpmで、グニャグニャしたウワモノシンセが主張していて、まるで初期のUmekか初期のSurgeonかっていう。端的に言うとドがつくくらいツボで、一気にファンになりました。

以来、曲を買ってはDJで使ったりしつつ、どこの国の人なんだろう、いつか来日しないかなと思っていましたが、先日ようやく念願叶いました。21日のVeta@moduleで初来日公演。そして、ウクライナの方だったのでした。

この日のパフォーマンスは、60分のライブと90分のDJによる2時間半のセットで、たっぷりと濃い世界を堪能できました。ライブはどんな機材を使っていたのか、EMX-1があるのは確認できたけど、あとはなにかハードウェアと、使っていたのかいないのかAbletonの立ち上がったPC。

まず、音がめちゃくちゃラフなんです。マスタリング時のようにデザインされた音では全然なくて、中低域はぼわっと塊になっているし、いろんな音が埋もれている。だけど、そんなことはどうでも良くて、そのなかでもキックがちゃんと「分かっている」鳴りかたで、かつ変態的なシンセの不協和音アルペジオが、プレイヤーの身体というフィルターを通して奇跡的にハマる瞬間が何度もあって、最高にスリリングでした。まるで安全装置のないジェットコースターに乗っているような、牙むき出しの猛獣と戯れるような。脳汁ドバドバ出ました。

やーなんか、ほんとこれなんですよテクノは。上手くある必要とかまったくない。それでも、確実にその人でないと作れないシーケンスというのがあって、トルカチェフはその意味で個性が突出している。

I’m really a big fan of Stanislav Tolkachev. I believe I released one of his tracks on Geophone recently. He contacted me years ago when he was not that well known, and I knew there was something special about him right from the beginning.
http://dubmonitor.com/mike-parker-interview/

これはMike Parkerによるトルカチェフ評で、実際に彼のレーベルGeophoneからリリースされた"Heartbeat"という曲は、キックのないトラックながら、反復するパーカッションとメランコリックなシンセのシーケンスで、異色の存在感を示していました。

私が彼の曲で特にお気に入りなのは、ベルギーのPlectorから昨年リリースされた"I Can't Wait Any Longer"。これはオフィシャルのビデオがあります。

Downwards一派のような退廃的美学は確かに入ってるんだけど、それよりもっと飾らないというかプリミティブというか、90年代の手探り感がある。一方で、この人とかMike Parkerがやっているような質感のテクノというのは、単なる懐古主義とは明らかに違う。この音はこの音なりの未完のアートフォームがあって、それを今のセンスで追求しているように感じます。
なぜそんなに肩入れするかというと、ぶっちゃけた話、私の作っているテクノの理想形と限りなく近いんですこれ。昔から聴いてくださっている方には、私が学生時代から今に至るまでやっていることはほぼこれと同じことだというのが分かっていただけると思うんですけども。

そういえば先日、RAに掲載されていたBlawanとPariahによるハードウェアライブユニットKarennへのインタビュー記事が、すごく良くてですね。もう、まさにと膝を打つ内容ばかりで。たとえばこれ。

音楽は別に完ぺきじゃなくても良いというか。ドラムンベースの奴らみたいに「最高のミックスダウンだな!」とか言わなくていいのさ。ドラムンベースのプロデューサーたちはミックスダウンのクオリティにこだわりすぎていて、クリーンでパーフェクトなミックスダウンじゃダメだと思っている。でもそうじゃない。そのサウンドでどう感じるかだ。
http://jp.residentadvisor.net/feature.aspx?2129

あるいは、最後のこれとか。

言っちゃえば、超マニアックな部分に自分たちを放り込んだら、たまたま上手くいったってだけの話さ。だから俺たちのようなライブや制作をしようと思っている人がいるなら、心配しなくていい。挑戦してみて、そこに入り込んでみれば、最高の作品が生まれる。上手くいかなかったらそれはそれだし。誰も文句は言わない。ただの音楽なんだからさ。
http://jp.residentadvisor.net/feature.aspx?2129

まあ、ここでドラムンを槍玉に上げているのは単に一般化できる比較対象としての例だろうけど、言わんとしていることは分かる。「完璧」じゃなくても「良い音」というのは確かにあって、こつこつ体裁を整えることよりも、突出した個性みたいなものを出していければ、アーティストにとってそれ以上価値のあることはないんじゃないか。あるいは、そのラフな音を聴いた人が「これくらいなら自分にも作れるかも」と思わせることのほうが(逆説的ではあるけれど)パワーとしては重要だったり。

Stanislav Tolkachev, BRUNA Live @ Dommune (Part 2) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=7bxzO5hmSUU

今回のパーティーに先立って、トルカチェフがDommuneに出演したときの映像。どんと貼るのも憚られるのでリンクだけにしておきますが、いやあまさにこれ。すべてあらかじめ135bpmで作った自作曲のみのよる90分のミックスで、3デッキ使ってほぼライブで。

あっちこっちに話が逸れましたが。この日、ライブのあとはDJセットで、そのままの勢いで往年のハードミニマルクラシックも交えつつ。ライブからはシームレスに繋いでいましたが、音が急に良くなったのですぐ分かった(笑)。Steve Stollの"Model T"(オリジナルのほう)とか、ベルトラムの"Game Form"とか、久しぶりに聴けてうれしかった。踊ったわ―。

Vetaというパーティー、以前Rødhåd初来日のときも遊びに来たけど(秋葉原重工#8とVeta with Rodhad | EPX studio blog)、毎回外タレが意欲的な人選で応援したくなります。まだ来日していない勢では、SHXCXCHCXSHとかすっごく聴きたいんですけど、どうですかね。

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