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「非ゲーム」なゲームたち

ゲーム2013-12-13 00:37

PS3の『Flowery』とか『風ノ旅ビト』みたいなゲームが好きで。パラメータもアイテムもなくて、敵キャラも戦闘もない。いかにもゲーム的な謎解きや駆け引きが一切なくて、だけど、確実になにかしらの新鮮な体験を、短い映像と音で伝えてくれるような作品に興味があります。

こういう作品って、バリバリ攻略するようなゲームが好きな人からしたら、ともすれば「雰囲気ゲー」と揶揄されても仕方ないようなところがあって、手放しにはお薦めしにくい。というのは、これらはおそらくゲームプレイのある一般のゲームとは本質的に別のもので、例えるなら絵画とサッカー、落語と野球、くらいの違いがある。たぶん、同じコンテクストで語るべきではないのです。

Steamで、そうした「非ゲーム」的なインディーゲーム作品をいくつか購入したので、通して最後までプレイした作品について、それぞれ覚え書き程度に、簡単に感想をまとめておきます。一人称視点の、FPSスタイルのものが多いですね。

『Proteus』

ロービットでデジタルな風合いで描かれた「野生」を、ひとつの島での何日分かの昼と夜を通じて体験する作品。単純なポリゴンともちょっと異なり、なんだかギザギザした、ブロックのような世界観。文字情報は一切なし、本当にただただ自然を観察しながら、無目的に島を歩き回るだけです。

でも、何度かハッとするような美しい光景に出会うことも。特に良いのがSEで、ちょっとした動物や虫、草木の動きからも生々しい(というと語弊があるけれども、この世界にふさわしい)音が聞こえてくる。場所によっては、ダイナミックに風景が変化して、思わず身構えるようなサイケな体験ができました。

プレイ時間は40分くらい。何度も遊ぶかというと微妙だけど、ラストはそれなりの演出もあって、一風変わった絵の世界に入ったなあ、という感じでした。2013年の作品。

Steam:Proteus
http://store.steampowered.com/app/219680/

『Dear Esther』

この手のゲームについて調べていると、度々言及されている作品のようなので、遊んでみました。2012年の作品ですが、ValveのSource Engineのmodとしては、08年ごろにオリジナルが発表されているようです。上のトレーラーの通り、ものすごくリアルな自然描写という点で、先のProteusとはまったく対照的な作風でありながら、いろいろな共通項がある作品でした。

エスターという謎の人物に宛てた手紙を読み上げるような体裁で、ナレーションが入る。島を探索していくと、いかにも何らかの事件か事故?かの痕跡がいくつも見つかるのだけど、別に謎解きをするというわけでもなく(触ったり拾ったりできるわけでもない)、プレイヤーは純粋に暗示的な風景を目撃していく。

ナレーションは英語のみ、しかも表現が抽象的というか、すごく詩的で、残念ながら初見のプレイではいまひとつ理解できませんでした。おそらくは何かしらの複雑なプロットがあって、単に私の英語力が足りないだけだと思うのだけど。それでも、最後は不思議な感傷に浸れました。

序盤の、キレイだけれど退屈な荒れ地で、淡々と山登りするのがちょっと辛い。そのあとは、おおっというような風景のなかに入って行けたり、探検っぽいこともできます。もし有志かなにかで日本語字幕が出たら、もう一度プレイしてみたいとは思います。

Steam:Dear Esther
http://store.steampowered.com/app/203810/

『The Stanley Parable』

これはですね、端的に言うと、ゲームというフォーマットを使ったコメディー作品でした。すごく面白かった。メタ・ゲームとして考え得る仕掛けを、端から試していくような内容で、例えるなら『Portal』の"The cake is a lie"が延々といろんなパターンで迫ってくるような感じ。あるいは、先鋭的なミステリ小説が、突飛な犯人を提示してくるような。でも、ものすごく笑えるんです、これ。

主人公はスタンリーという人物。彼はある会社で、従業員「ナンバー427」として、毎日毎日、画面に現れたとおりにキーを叩くというだけの仕事をしている。あるとき気がつくと、彼を除いたすべての従業員が忽然と姿を消してしまい、スタンリーはその原因を探るためにまず会議室に向かうが…、という導入。

この、ある意味ありきたりの導入は、実はすべて「フリ」なのです。ここを発端に、ナレーターがあらゆる手で、その…ネタを仕掛けてくる。しかもプレイヤーの行動に応じて、そのネタがリアルタイムに変わっていく。これは、純然たるコメディーだけども、ゲームでしか実現できなかった。そこが非常に知的で、上手い。

興味を持ったかたは、プレイ動画などのネタバレを避けて、まずはSteamでダウンロードできる無料のデモをプレイすることをお勧めします。私はこれ遊んでみて、The Stanley Parableが何なのか全然分からなかったけれども、完全に逆説的に、どういうゲームなのかだいたい分かってしまった。

2013年10月にリリースされたばかりの作品。日本語字幕はないけれど、そんなに難しい英語はないので、デモが楽しめれば本編も大丈夫です。タイトルのparableは寓話、たとえ話という意味。

Steam:The Stanley Parable
http://store.steampowered.com/app/221910/

『9.03m』

2013年9月に発表された本作は、上のどれとも少し毛色の違う、ごく短い作品です。というのも、本作は2011年の東日本大震災の被災者へ捧げられた作品で、売り上げの50%が寄付金になるとのこと。タイトルは、津波の高さかな。

夜の海を舞台として、プレイヤーが蝶を追っていくと、さまざまな物語性が見えてくる。といっても、仕掛けはごくシンプルでゲームプレイとは呼べないようなもので、むしろ、しばしの瞑想のような体験。誰もがこのゲームの最中、被災者について思いを馳せるだろうし、ゲームとしてこういう作品表現もできるのか、と考えさせられました。1.99USドル。

Steam:9.03m
http://store.steampowered.com/app/263100/

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